244 : 102[sage] 投稿日:2011/07/21(木) 19:50:39.83 ID:K+F3ZuES0 [20/34回(PC)]
先ほどと違いボーっとしているを見取ったTが「大丈夫か?さっきからこの林道は 
おかしな気配を感じてたんだけど… 
俺の気のせいかもしれんがお前も判るか?… 

お前が走り出してしばらくしたら、山間に響いていたエンジン音が 
聞こえなくなっちまって…もしかして転落でもしたのかって心配になったんだ。 
あんまりにも遅いから心配になって様子を見に来たんだが何かあったのか?」 
と俺の肩に手を置きながらそう話しかけてきた。


245 : 102[sage] 投稿日:2011/07/21(木) 19:55:00.48 ID:K+F3ZuES0 [21/34回(PC)]
「あぁ、それが…うーん、俺もなんだか自信が無いんだが…実は…」と 
言いかけた時、「おい○○、ミラーが割れてるんじゃないか。 
スッ転んで気でも失ってたんだろ?。それにお前一人で沢渡りでもしたみたいに 
バイクがびしょ濡れじゃないか!その背中も何か濡れた荷物でも背負ってたみたいに 
染みができてるぞ!?」 
と懐中電灯を背中に向けたAが素っ頓狂な声を上げてこう言った。 

言われて気がついたのだが、その時俺のバイクのシートと着ていたジャケットの 
背中一面はベタベタに濡れていて、まるで沢に入り込んで 
背中から水を被ったみたいになっていたそうだ。 



254 : 102[sage] 投稿日:2011/07/21(木) 22:11:59.63 ID:K+F3ZuES0 [24/34回(PC)]
察しの良いTから「お前も何かトラぶったみたいだしこの暗さだ、とりあえず 
この先は行かない方が良いみたいだな。それにお前(A)もライトがやられているから 
これでコケられでもしたらもっと面倒だ、それに何だかこの山は変な空気というか 
雰囲気が気になるんだ。 
癪だけど今日のところはあそこで一泊して明日また明るくなってから散策しようや」 
という提案が出た。 

転倒を予言されたAはあまり面白い気分にはならなかった様だが、俺がかなり 
疲弊している事を感じてくれたのか黙ってTに従ってくれた。 

俺も正直またあそこに戻るのは怖いというか複雑な気分だったので 
Tの提案が有難かったのは言うまでもなかった。 



255 : 102[sage] 投稿日:2011/07/21(木) 22:13:05.80 ID:K+F3ZuES0 [25/34回(PC)]
この後の俺の朝までの記憶は曖昧としか言えない。 
転倒場所に程近い場所に2人が気を回して俺のテントも設営されていた。 
俺はそこに潜り込むと飯も食べずにすぐに寝てしまったらしい。 
その夜遅くまで起きて酒を飲んでいたというTとAは、時折山の中に 
シャリン…という鈴のような音がしたり、鼓のような音がしたと 
口をそろえて話していたが、俺はまるで泥のように翌朝まで眠っていたため、 
何も感じはしなかった。 



256 : 102[sage] 投稿日:2011/07/21(木) 22:15:10.83 ID:K+F3ZuES0 [26/34回(PC)]
翌日明るくなってから、Aたっての希望でピストン林道最奥部まで 
単独トライに出かけて行った。 

Aが出発したのを見送って、俺は昨日の転倒で右手を痛め、俺同様に留守番を 
買って出たTに昨夜の事をわかる範囲で話そうとしたのだが、 
自分でもなぜか判らないが話すのは止めてしまった。 

昨夜の単独走行を俺は5分~10分程度に感じていたが、Tによると実際は 
小1時間ほど経っていたらしい。 
この間の全てを俺は不自然にならない程度で真実は伏せる形でTに話す事にした。 



257 : 102[sage] 投稿日:2011/07/21(木) 22:17:37.54 ID:K+F3ZuES0 [27/34回(PC)]
恐る恐る進んで行ったから余計な時間が掛かってしまった。 
バイクと背中の水は途中の水溜りに気が付かないでもろに突っ込んだからこうなった。 
バックミラーはぬかるんだ地面にバイクを立てて立小便していたら 
スタンドがめり込んで割れてしまった 
とこんな感じで話しておいた。 

バイクの横に座り込み、最後まで黙って俺の話を聞いていたTは 
「そうか、大変だったな。一人で行かせて本当にすまなかった。」と言うと、 
テーピングしている痛めた右手首を庇いながら器用にパーコレーターでコーヒーを沸かすと、 
熱い1杯を俺にご馳走してくれた。