130 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2011/07/19(火) 22:53:33.34 ID:BbnkMxRy0 [21/29回(PC)]
102です 

規則的にアイドリングしていたバイクのエンジンが突然不規則になったかと思った 
次の瞬間に止まってしまったのだ。 
一瞬何が起きたのかが判らず思考停止状態になってしまった。 
そして猛烈な不安感に襲われた。 

周囲は月明かりもなく真っ暗。 
聞こえるのは滝を流れ落ちる水の音と虫の声そしてヘルメットの中で妙に大きく 
聞こえる自分の呼吸音だけ。 
エンストしただけならばヘッドライトは点燈したままになるはずなのだが、 
この時は違った。ヘッドライトはおろか計器類のバックライトもことごとく 
消えてしまっていた。 


131 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2011/07/19(火) 22:56:28.27 ID:BbnkMxRy0 [22/29回(PC)]
102です 

周りが真っ暗になった怖さと自分の呼吸音の大きさでパニックになりそうだったが 
現実的な思考にフォーカスをあてて必死に原因を考える事で何とかパニックを 
回避する事に集中した。 
全てブラックアウトしたことから最初はイグニッションキーを間違えてOFFに 
回してしまったのかと思ったがキーはONになったまま動いていない。 

次に考えられる事はガス欠だが、たとえ未舗装の林道はアスファルトと比べて 
燃費は落ちるとはいえ走行距離からガス欠は少々考えづらい。 
車体サイドにあるガソリンコックがブーツに当たって閉じられる事も考えられたが 
コックは通常の位置でOFFにはなっていない。 

突然エンジンが停止してヘッドライトを含む計器類のバックライトまでもが 
消えた事からしてあと考えられることはヒューズなどの電装トラブルだが、 
沢渡りや雨などで車体が濡れた訳でもない事から電装トラブルも可能性は低い。


 
132 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2011/07/19(火) 23:03:26.87 ID:BbnkMxRy0 [23/29回(PC)]
102です 

全ての可能性を頭の中でシュミレートしてみた結果は原因不明… 
ここでまた先ほどからの違和感が再び襲い掛かってきた。 
ここは何かがおかしい! 

この時視界を制限して呼吸音を強調させるヘルメットがとてもわずらわしく 
感じた俺はヘルメットを脱ぎ、バイクから降りて打開策を考えようとした。 
バイク用グローブを外すのももどかしくあご紐を外し、やっとの事で 
ヘルメットを脱ぎ、バックミラーにヘルメットを掛けようとしたとき、 
先ほどまでヘルメットをかぶっていた時でさえ聞こえていた滝の音がすっと 
遠ざかり、それに呼応するかの様に秋の虫の声も急速に途絶えていった。 

何か濃密な空間が突然バイクの周りに発生したような…それとも逆に俺が 
入り込んでしまったかの様な感覚。聞こえるのは自分の呼吸音のみになった… 

夕闇の中、突然訪れた息苦しいほどの静寂。 
この時間は一瞬だったのかもう少し時間が経ったかは判らない。 
とにかく心が押しつぶされそうになったその時、 
それが起きた… 



133 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2011/07/19(火) 23:06:08.97 ID:BbnkMxRy0 [24/29回(PC)]
102です 

ギシッ… 

突然背中の産毛が総毛立ち、バイクのリアサスペンションが大きく沈んだ。 
まるで誰かが後ろに跨ったか乗ったかの様にバイクがリア側に傾いだのだ。 

人智を超えた何かが俺の背後で起きていると本能が直感した。ハンドルで 
車体を支えないと横に倒れてしまいそうになる。 

しかし、もう恐怖で動けなかった。 
背中の鳥肌が全身に回る。何かの呪縛にあったかの様にヘルメットを 
掛けようとした姿勢から体を動かす事ができない。いや、振り向いた途端に 
何かの均衡が壊れてしまいそうな恐怖に身がすくんでしまっていたのかもしれない。 
ただできる事といえば必死に両脚で車体を支えるのみ。 



134 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2011/07/19(火) 23:08:24.83 ID:BbnkMxRy0 [25/29回(PC)]
102です 

背中は相変わらず総毛立ち、悪寒すら覚えるのに額からは脂汗が滝のように 
落ちてくる。 
車体は依然としてリアに重量物を積んだように傾いでいる。 
その時本能的に、いや意図的に視線を外していたが… 

耐えられなくなり、俺はヘルメットを掛けようとしていた 
右のバックミラーの中を…後ろを見てしまった… 



135 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2011/07/19(火) 23:10:35.30 ID:BbnkMxRy0 [26/29回(PC)]
口腔内で短く発せられた悲鳴。 
意思とは裏腹に凝視してしまう。 
黒く切り取られた空間。 
鏡に映った左右逆の世界。 
そこに映し出されていたのは 
無数の鬼火だった。 

幽玄に漂う大小無数の鬼火がバックミラーに映る視界一杯に浮かんでいた。 
普通なら真っ暗闇で見えるはずはない、しかし鏡に映し出された空間には 
滝つぼを中心としてその側にある祠が先ほどとは違い鮮やかな朱色で 
はっきり映し出されていた。 
そこは暗闇のなかを鬼火が照らし出した先ほど見た広場だった。