796 : 本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2011/07/13(水) 17:44:29.01 ID:cdST90bp0 [1/7回(PC)]
“怖かった話”をひとつ…。 

幼かった頃、確か5~6才くらいの1970年代後半 
真夏の夕刻、外は薄暗くなりかけていた。 

父が『ビールを買いに行く』と言うので 
あわよくばジュースをねだろうと思い、ついていく事にした。 

玄関ドアを開くと突然の夕立。 
酒屋までは、直線距離にしても150mあるかないかの距離なので 
俺は無意識のうちに傘もささず、駆け出した。


797 : 本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2011/07/13(水) 18:01:44.99 ID:cdST90bp0 [2/7回(PC)]
150mの距離の中 
20mもしないうちに、住宅街の十字路に差し掛かるのだが 
その一角に見えた。 

“見た”と言うより、視覚を無視して直接意識に飛び込んできた感じ。 

赤いハット 赤い靴 赤い傘 赤い唇 赤いコート 

全てが赤い女 

十字路の片隅で、雨の中、傘をさし立ち尽くしてる女 

“赤”の全ては、今思えば時代を象徴しているかのような 
エナメルチックなテカテカ、ツルツルしたような赤。 

ただ、そのエナメルのような素材から 
レインコートかな?っとも思えた。 
コートは妙だ。真夏である。傘もさしている。



798 : 本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2011/07/13(水) 18:10:01.98 ID:cdST90bp0 [3/7回(PC)]
蒼白というのか、曇り空色の顔はうつむき加減でピクリとも動かない。 

俺は雨の中走ってた、まじまじと見つめていた訳じゃない 
情報として瞬時に飛び込んできた。 

その時点では、不思議っていうしか言いようのない感情ではあったが 
すぐさまそこを離れたい気分でもあった。 

酒屋に着くと、父も傘はささず小走りでやって来た。 
店はカクウチ(立ち飲み)もできるような酒場だったので 
父は店で出会わせた近所のおじさん連中と談笑を始めた。



800 : 本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2011/07/13(水) 18:19:24.22 ID:cdST90bp0 [4/7回(PC)]
30~40分は経ってただろうか 
俺はその間、酒臭いおっさん連中に馴染める訳もなく 
ひとり、じわじわを恐怖心に変わってきている不思議感を 
父や周りの誰かに言いたかった。 
しかし、誰かに入れ知恵されたかのようにこみ上げる感情。 

『誰にも言わないほうがいい!もうこれ以上触れないほうがいい!』 

いざ家に帰ろうかとした時には 
夜中と変わらない暗さになり、雨は降り続いていた。 

もう、雨に濡れるからって理由だけじゃなく 
恐怖を素通りしなければ家に帰れないという理由から 
俺は全速力で走った。



803 : 本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2011/07/13(水) 18:27:14.24 ID:cdST90bp0 [5/7回(PC)]
街灯にぼんやり照らされる十字路の一角 
視線をそらす、目を閉じる… 

しかし、一切見ずして走りきるのは到底無理な話。 
視界に一瞬とらえてしまった赤い傘。 

『誰か待ってるのかな?タクシーでも待ってるのかな?』 

そんな微かな期待も吹っ飛んだ。 
30~40分も待ってるもんなのか?? 

家に着くと父はやはり何も感じなかったように思えた。



804 : 本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2011/07/13(水) 18:32:34.18 ID:cdST90bp0 [6/7回(PC)]
小さな町の小さな十字路 
その町でそれから十数年暮らすのだが 
やたら事故は多い十字路だった。 
運送会社の軽トラがひっくりかえったり…。 

安易に関連付けるのもあれだが 
そう思うようにしようと、思った。 


幼いこのくらいの歳じゃ“怖い”はMAX 
きっと大人でも気持ち悪い筈。 
怖い話なんてリアルで実体験してナンボ…と。