313 : 子どもの頃の話 1[sage] 投稿日:2011/07/04(月) 12:12:52.40 ID:BotyOxt20 [1/3回(PC)]
小学校入学直前くらいの頃、私の家族は東京から東北の某県へと引越をした。 
最初に住んだのは駅から近い木造アパートの1階。 
引越してしばらく経ったある夜のことである。 
深夜ふと目覚めた。 
当時、二段ベッドの上に寝ていたのだが、私が横になるとちょうど視線の先に 
低い洋服ダンスがあり、そのすぐ横に襖がある。 

そこに誰かが立っている。 
雰囲気は女性なのだが良くは分からない。 
薄いピンク色の光に包まれ、まるで風にたなびくように 
ゆらっ、ゆらっ、と動く。 
よく見ると、後ろにあるタンスが透けて見えた。 

 
314 : 子どもの頃の話 2[sage] 投稿日:2011/07/04(月) 12:14:52.16 ID:BotyOxt20 [2/3回(PC)]
両親は間違えなくベッドの下に寝ている。 
下のベッドには妹の足が見える。 
怖くて、怖くて目をつぶった。目を開けたとき消えていることを祈ったが、 
恐る恐る目を開くと影は相変わらず立ったままである。 

そんなことを何時間か繰り返し、うっすらと明るくなった頃、 
突如その影が消えた。 
飛び降りるようにベッドから降り、母親の眠る布団へ潜り込んだ。 
朝が近づき、近くには母親が眠っていることもあり、一気に安心感が湧いてきた。 
母親が眠る布団の先には居間があり、その隅に座卓型の鏡台があった。 

その鏡に人の横顔が写っている。 
さっきと違い、はっきり分かる。おばあさんと思われる女性の横顔である。


 
315 : 子どもの頃の話 3[sage] 投稿日:2011/07/04(月) 12:16:27.74 ID:BotyOxt20 [3/3回(PC)]
その横顔が鏡の縁に乗せたように写っている。 
そしてその横顔が、さかんに口を動かし、息継ぐ暇もないほどの勢いで 
何かを喋っているのである。 

鏡台の先には台所と居間を隔てるガラス戸が閉まっていて、それが 
そのまま写っている。外の景色等は全く入って来ない。 
今度は怖いというより、不思議という感覚しかなかった。 
しばらく見ていたが、先ほどのことで疲れていたこともあって、 
私はそのまま眠ってしまった。 

そのアパートでそんなことがあったのはそれ一度だけだったし、 
子供の頃の話でもあって、夢だったのかも知れない、とも思う。 
ただその後、小学校へ入学してからすぐ、アパートの裏手に住む 
同級生が火事で死んでしまったことをよく覚えている。