783 : 喪服の女5[sage] 投稿日:2011/06/12(日) 04:48:39.60 ID:D9irWjtj0 [6/15回(PC)]
>>782の続き 
俺が「おいBどうした?何かいたのか?」というと、Bは「しっ!静かに」といって階段を登りきった 
先のほうを凝視している。 
暫らくするとBは「おい、ゆっくりだ、騒がずゆっくり逃げるぞ」と小声で言い、俺に後ろに下がる 
ように言ってきた。 
どうもBは二階に何かを見たらしい。 

俺が「なんだ、何かいたのか?」というと、Bは「後で話す、ここはヤバイ、早く逃げよう」と 
だけ言った。 
そして俺が降り始めたとき、突然Bが 

「こっち見た!やばい!早く下りろ!」 

と叫び出した。 
何がなんだか解らずおれは階段を駆け下り、A達のところに向かうと、まだAは引き上げられて 
いなかった。 
Bが「何やってんだ!早くしろって!ここから逃げるぞ!」というと、AもCも事態がつかめず、 
「なんだよB、何があったんだ?」と不安そうに聞いてきた。 

その時、天井から聞こえていた何かを引っ掻く音が 

ガリガリガリガリガリ! 

と急に激しい音になり、次いで 

…ギシ…ギシ 

と二階を誰かが歩く音が聞こえてきた。 
足音はゆっくりとだが階段の方へ向かっているように聞こえる。 

続く

 
784 : 喪服の女6[sage] 投稿日:2011/06/12(日) 04:51:26.73 ID:D9irWjtj0 [7/15回(PC)]
>>783の続き 
流石に俺とA、Cも何かヤバイという事が解り、無理矢理にでもAを引き上げようと力いっぱい 
引っ張る事にした。 
その時、ふと俺が顔を上げたとき、床の間の方に信じられないものを見た。 

なんと、DとEが懐中時計の入った箱を手に持ち、俺たちを置いて逃げようとしている。 
俺は「おいD、Eお前ら何やってんだ!そんな事してる場合じゃないだろ、こっちきて 
A助けるの手伝えよ!」というと、2人は一瞬こちらを振り向いたが、そもまま部屋を出て 
逃げて行ってしまった。 
ありえない、この状況でこんな事できる神経が信じられなかった。 

一瞬俺とBが2人を追いかけようとしたが、まずはAを助けるのが先と気付き追うのをやめた。 
そして、“かえし”になっている床板部分が問題という事で、急いでその部分を踏みつけて 
崩していると、とうとう足音が階段の近くまでやってきた。 
そして、また 

ガリガリガリガリガリ! 

と激しく壁か床を引っ掻く音が聞こえてくる。 
俺たちはかなり焦っていた、夏場で熱いのもあるが、明らかにそれとは違ういやな汗を 
かいていた。 

…ミシ 

足音はとうとう階段を下り始めた。 
そのとき、やっとの事でAを引き上げることに成功した。 
俺たちは大急ぎで部屋を出ると、もと来た廊下を戻り外に出た。 
その時、俺は一瞬だが階段のところに人の足を見た、一瞬だったので 
良く解らなかったが、白い足袋を履いているように見えた。 
そして全員裏口から外に出ると、そのまま外に停めてあった自転車に乗り、 
全力でBの家まで逃げ帰った。 
続く



785 : 喪服の女7[sage] 投稿日:2011/06/12(日) 04:52:39.29 ID:D9irWjtj0 [8/15回(PC)]
>>784の続き 
Bの部屋に入ると、Bがやっと廃屋の二階で見た事を話し始めた。 
階段を登りきる辺りで、Bは何かを引っ掻くような音が二階の部屋ではなく 
二階にある壁そのものから聞こえている事に気付いたらしい。 
そして、音のする壁がどこなのか探していると、月明かりに照らされた一番 
奥の壁に何か黒っぽいしみのようなものがあるのを発見した。 

音はどうやらその壁から聞こえてきているようだったという。 
ここまで聞いて、俺は「それだとその壁のある部屋の中から聞こえているって 
可能性もあるんじゃね?」と聞くと、Bは「いや、それなら音が少しこもるから 
解るだろ、まあ説明するから聞いてくれ」といって話を続けた。 

黒い沁みのようなものを凝視していると、まず壁から人の手が伸びてきて 
壁を引っ掻き出し、次に顔、体、足という順に喪服を着てガリガリに痩せた 
老婆?のような人影が出てきたらしい。 
そしてその老婆は、完全に壁から出てくると廊下に正座し、壁をガリガリと 
また引っ掻き出したんだという。 

Bはここまで話すと一瞬身震いして右手で左腕の肩の辺りを触りながら、 
「俺、それをじっとみてたんだよ、そしたらさ、その婆さんがこっちを振り返って 
ニヤニヤって感じで笑ったんだよ…」それで俺に「こっち見た、早く逃げろと」 
言った部分に繋がるらしい。 
Bは続けて「あのニヤニヤ顔はヤバかった…月明かりだけで薄暗かったけど、 
『悪意のある顔』ってのがどういうものか、俺はほんと良く解ったよ…」と、そして 
「あの顔一生忘れられねーよ…」と頭を抱えて黙ってしまった。 

Bの態度を見て全員沈黙してしまったのだが、暫らくしてAが「そんな事より 
DとEだ、あいつら最悪だろ!俺たち見捨てて逃げやがった!」とかなり 
怒っている。 
続き



786 : 喪服の女8[sage] 投稿日:2011/06/12(日) 04:54:38.82 ID:D9irWjtj0 [9/15回(PC)]
>>785の続き 
Aは自分が一番危ない状況だったのだから当たり前だが。 
そして俺が「あいつら見捨てて逃げただけじゃないぞ、あの時見つけた懐中時計 
を盗んで逃げやがった、しんじらんねぇよ…」と、懐中時計が盗まれている 
事も皆に教えた。 
その日はそのままBの家に泊まり、DとEに文句言うのは月曜ということになった。 

月曜日、俺たちが学校へ行くと、DとEは予想通り俺たちを避けていた。 
文句を言おうにも授業が終ると教室の外へ行き、次の授業まで帰ってこない、 
そんな状態が暫らく続いた。 
その間俺たちは、DとEの話をクラスのみんなに話したのだが、その時初めて 
何故女子が無視していたのかを知った。 
なんとDとEは、女子相手にクラスの男子の陰口や自分達の自慢話をしていて、それで 
嫌われていたらしいのだ。 
その結果、3日もしないうちにDとEはクラスで完全に孤立した。 

それから数日後、俺たちはこの事件がまだ終わっていない事を思い知らされた。 
最初の変化はBのところに現れた。 
Bによると、夜中寝ているとBの部屋の窓のところに老婆が現れ、一晩中ガラスを 
引っ掻いていたらしい。そして、同じ事それから一日後にAと、更に1日あけて俺 
ところにもやってきた。 
ただ、窓辺に立って引っ掻く音を立てるだけで、実害らしい実害はなかったが、 
空き家であれの顔を見ていたBはかなり怯えていた。 

俺のところに老婆がやってきた翌朝、その事を教室で話していると、Aが「もしかして…」 
と携帯を弄り始めた。 
何かと思ってみていると、Aは携帯の地図を見せながら「ここがBの家で、ここが空き家で…」 
と説明し始めたのだが、俺はその意味がすぐに解った。 
「問題の空き家から近い順に回っている?でもなんで?」Bが答えると、Aは「解らないけど、 
もしかして例の懐中時計を探しているとか…?」と言った。 
続く



787 : 喪服の9[sage] 投稿日:2011/06/12(日) 04:55:48.26 ID:D9irWjtj0 [10/15回(PC)]
>>786の続き 
たしかに可能性はある、でも、懐中時計を持っていったのはDとEで俺たちは関係が無い、 
Cもそう思ったのか「俺たち関係ねーじゃん、なんで付き纏われるんだよ」という。 
たしかに、懐中時計が原因だとすると凄く理不尽だ。 
そして肝心のDとEなのだが、2人がホームステイしている家はあの日のメンバー 
の中で一番空き家から遠い、俺たちが考えている通りならば、まだ留学生2人のところにも 
来る可能性はあった。 

とにかく次は距離的にCのところに老婆が来る可能性が凄く高いので、一応部屋に盛り塩 
をして警戒しようという話になった。 
何かあるにしてもそれはDとEに対してであって、Cのとろこに来ても俺たち3人に起きた 
程度のことだろうとタカを括っていたからだった。 
Cの家に来る予定だった日の翌朝、学校へ行くとCが入院したと言う話を聞かされた。 
詳しく聞いてみると、入院と行ってもすぐに退院できる程度らしいが… 
放課後俺たちが病院へ行くと、擦り傷だらけで真っ青な顔のCがベットに横に 
なっていた。 
意識もあるしぱっと見怪我も大した事無さそうだが、精神的に相当まいっているようだ。 

俺たちはCに何があったのか事情を聞いた(以下はCの話) 
Cが夜寝ていると、俺たちのときと同じように窓のあたりから 

…カリ…カリ 

と何かを引っ掻くような音が聞こえてきたらしい。 
Cはとにかく気にしないように、窓とは反対方向を向いて寝ていたのだが、はじめ 
外から聞こえていた引っ掻く音が、暫らくすると「部屋の中」から聞こえるように 
なった。 
なにかおかしい。 
そう思ったCが寝返りをうつ振りをして窓の方を見たとき、なんと自分の顔のすぐ横 
にやつの顔があり、やつはニヤニヤという感じの明らかに悪意のある顔でCを 
覗き込んでいた。 
続く