331 : 死の彫刻(3/10)[sage] 投稿日:2011/02/09(水) 03:09:07 ID:QZ6Vr1r10 [3/7回(PC)]
舗装路は状態が悪く、所々裂け目から雑草がはみ出している。 
自転車のタイヤを引っかけないよう注意しながら進むと、 
100mほど先に鬱蒼と生い茂る雑木林の入口が見えて来た。 
その手前には、小さなプレハブ小屋のような粗末な建物が見える。 

その場所で栗本が皆に合図を送り、自転車を崖の陰になるように置いてから徒歩で進むことになった。 
少し歩き始めてから栗本がふと立ち止まり、いざという時のため自転車を帰りの方向へ向けておく事を提案した。 
みんな黙ってその指示に従う。 

再び小屋へ向かって歩き始める。もし建物から見ればこちらの姿は丸見えになってしまいそうだ。 
道はプレハブ小屋のすぐ横を通り、崖と雑木林に挟まれる形で真っ暗な木々の中へと吸い込まれていて、 
その先に何があるのかは全くわからない。少なくともあまり人が通りそうな道ではないことが分かった。 
周囲には人が住んでいそうな民家がまるで無く、以前は田畑があったと思われる農地も荒みきって、 
雑草が子供の背丈ほどの高さに伸びていた。 

ソロリ、ソロリと様子を見ながら小屋に近付いて行く。 
改めてその小屋をよく見ると、窓の部分にはブルーシートが内側から掛けられていて、 
部屋の中の様子は全く窺い知ることが出来ない。 
それと同時に中からもこちらを見ることが出来ない事がわかり、安堵感から少し気持ちが楽になる。 

それでもみんな押し黙って、もし不審な動きがあればすぐさま引き返せるよう慎重に歩を進めた。 
栗本が手で全員を静止してから一人で小屋に近付いて行く、死角になっている小屋の裏側まで一通りチェックして、 
問題がない事を確認してから俺達を手招きで呼び寄せた。

 
332 : 死の彫刻(4/10)[sage] 投稿日:2011/02/09(水) 03:12:33 ID:o9/UWy+S0 [1/3回(PC)]
間近で見るとその小屋は一層不気味な雰囲気が漂っていた。 
トタンの屋根はサビサビになっていて、壁の塗装も剥がれ落ち、周りは雑草が生え放題になっている。 
敷地の境界と思われる場所には、割った竹を組み合わせて造られた手作り風の柵のようなものが張り巡らされていたが、 
完全に朽ち果てていて、それがみすぼらしさを強調していた。 

窓の一つを近くから覗き込んでみる。ブルーシートが少し捲れて部屋の中の様子が見えたのだが、 
かなり暗くて全体はよく見えない。しかし今朝栗本に見せてもらった物と同じくらいの大きさの彫刻が、 
壁際の棚や机、床の上などに無数に転がっていた。 

それらの一つ一つが非常に精巧に作られているのは、ちょっと見ただけでもよくわかったのだが、 
すべての彫刻が陰惨な雰囲気を持っており、中には腐敗途中の顔に見える物、半分白骨化しているように見える物、 
完全に白骨化した物、黒と白の不気味なペイントで不吉なマスクを被ったように見えるものまであった。 
表情の見えるものはすべて栗本が見せてくれたのと同じような苦悶の表情を浮かべている。 

それらが、壁のある一点を見つめるように配置されていた。 
視線を自然にその場所へ移すと、ひな壇のような形の祭壇があり、そこに薄気味の悪いお供え物が並べられている。 
A3サイズくらいの大きめな額には、目を瞑って髪と髭をボサボサに伸ばした小太りの男性の写真が飾られており、 
白っぽい服を身につけていることが分かった。この男性を崇めるような形で蝋燭やマッチ箱、 
ちょっとしたフルーツなどが雑然と置かれている。 

お供え物が痛んでいない所を見ると、この小屋が完全には放置されていないことが自然に窺い知れた。 
その当時はよくわからなかったのだが、いわゆる邪信教の祭壇というような風情を醸し出していた。 

栗本は「ここだ」と言うと、窓の一つを指さしてガラスのはめ込まれたギシギシ軋む木枠の窓をスライドさせた。 
ブルーシートを内側に押し込んで窓から侵入し、手招きで全員に合図を送った。



333 : 死の彫刻(5/10)[sage] 投稿日:2011/02/09(水) 03:13:15 ID:o9/UWy+S0 [2/3回(PC)]
しかし中の様子がハッキリ見えて来ると、ますます不気味な部屋の様子に全員がビビってしまい、 
入ることを躊躇い始めた。 

栗本は「何をやってるんだ? 早く来い」と強引にみんなを連れ込もうとするが、 
他のメンバーはお互いに顔を見合せたまま、誰一人として小屋に入ろうとはしない。 
そこで栗本が「じゃあ、小屋の外で誰かが見張りをしていて、人が来たらすぐに逃げられるようにしよう」と提案し、 
渋々みんなが了承して話がまとまった。 

じゃんけんの結果、俺が一番最後まで勝ち残り、見張り役をすることになった。 
全員が窓枠から体を潜り込ませる。口々に「うわぁ~、なんだこれ?」とか「気持ち悪いな~。」とか、 
「電器は点かないのかな?」などと呟いている。 

ちょっぴり疎外感を感じ、一緒に中に入れば良かったかなぁと後悔し始めた時だ。 
林の奥の方からボロ服を身につけて、白髪交じりの不潔そうな髪を振り乱した、浮浪者のような男が、 
ブツブツ何事かを呟きながら突然現れた。 
片足を引きずるような感じで、歩いてこちらに向かって来る。 

俺はビックリ仰天して中の連中に「誰か来たぞ! 早く出ろ、早く! 俺は先に逃げるぞ!」と小声で警告してから、 
もう一度その人物を見ると、その人物も俺の方に気が付いたようだった。 
狂ったように目を見開くと、不明瞭にくぐもった奇声を上げ、びっこを引きながら猛烈な勢いで走って来る。 

その様子に心底ゾッとさせられた俺は、足が竦み自分では上手くコントロールできなくなりそうな程の衝撃を受け、 
よろよろと走り始める。早く走ろうとすればするほど思い通りにならないモドカシサに焦りながら、 
全力疾走で自転車の所まで駆けだした。