347 : 341[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 18:59:11 ID:u2/av3K90 [5/11回(PC)]
当時は夫婦二人だったので狭いマンションに暮らしていた。 
ちょっとイメージしにくいかもしんないけど、 
俺と妻がふすまに頭を向けてならんで寝ていて、 
ふすまで仕切られた奥の部屋に、義姉とその息子が寝ていた。 

俺が霊らしきものを見てしまうのは、金縛りにあっているときが一番多い。 
金縛りにあっているときに見える奴らは、大体上半身だけだったり、 
顔や手だけ出てくるとか、 
とにかく全身がはっきり見えることはほとんどない。 

そしてある夜、俺はまた金縛りにあった。 
あーまた金縛りだ嫌だなと思ったら、足元からウーッだのフーッだの、 
人間の鼻息? 
あるいは、動物が威嚇している時のような変な音が聞こえてきた。 
あーこれはまた幻聴かな?俺も疲れてるんだなとか思って、 
金縛りで体は動かないんだけど、なんとか首と眼だけを必死で傾けて、 
音のする足元の方向をのぞいてみた。 

 
349 : 341[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 19:00:54 ID:u2/av3K90 [6/11回(PC)]
するとそこに、足と手をふんばって仁王立ちの様にたっている 
3歳くらいの女の子がいたんだ。 
顔の表情だけがつぶれていてよく見えないんだけど、 
怒って泣いているというのだけはよくわかった。 

どんな表情だったかを説明するのは難しいが、 
小学生の時、体育館で「おこりじぞう」という 
原爆関連の映画をみたことがある。 
あの表情は、例えていうなら、 
「おこりじぞう」が怒った顔にそっくりだった。 

今思い出してもゾッとするほどその存在は怖かった。 
俺が普段みる霊のようなものは、なんとなくあいまいな存在で、 
明らかな実体をともなったものではない。 
だから霊を見たとしても、「この霊に殺されるかも……」というような 
恐怖を感じることはあまりない。 



351 : 341[sage] 投稿日:2011/01/31(月) 19:02:21 ID:u2/av3K90 [8/11回(PC)]
しかしあのとき見えたものは、なんというか、ただの幻覚ではなく、 
その体重や鼻息、体温まではっきりと五感で感じることができて、 
踏ん張ってる手足の血管の一本一本まではっきりと見えるような 
圧倒的な存在感を持って俺に迫ってきたんだ。 
俺は生まれて初めて、「こいつに殺されるかもしれない!」 
という強い恐怖を感じた。 

体は動かず、とにかくもう目をつぶって、 
「ごめんなさいごめんなさい」とずっと唱えていた。 
ずっと前に亡くなった祖母を思い、「ばあちゃん助けて……」 
とも唱えた。 

とても怖かったけどどうも様子がおかしい。 
どうも奴のターゲットは、俺じゃないようだ。 
奴は俺の足元に立って、俺の頭の方を見ていたが、俺の頭を越えて、 
ふすまの方をずっと見ていたみたいなんだ。 
(ふすまの向こうには義姉が寝ている) 

「あれっ?俺はひょっとして関係ないのかな?助かるのかな?」 
と思った瞬間、すーっと体が楽になった。 
あわててとび起きて妻をたたき起し、 
隣で寝ている義姉と甥っ子もたたき起してもらった。