772 : 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ [sage] 投稿日:2011/02/22(火) 20:27:28.63 ID:R5Igb54t0 [1/3回(PC)]
友人の話。 

夏の終わり、一人で山歩きをしていた夕暮れ、小さな集落跡と出会した。 
土壁が崩れて屋根も落ちかけている廃屋が十軒ばかり。 
物悲しい情景を味わいながらブラブラと歩いていると、どこからか歌声が聞こえてきた。 
村のどこかで子供たちが童歌を歌っている。 

はて、誰がこんな山奥まで子連れで遊びに来たものやら。 
疑問に思い、歌声の方へ足を進めてみた。 

見当を付けた場所へ行ってみたが、人っ子一人としていない。 
すると今度は、通り過ぎてきた背後の角から歌声が聞こえてくる。 
思い切り走って角の向こうを覗いてみたが、やはり子供の姿は見えなかった。 

集落の隅から隅まで巡ってみても、子供たちに遇うことは叶わなかった。 
諦めて下山することにし、集落を後にする。 
童歌は途切れることなく続いていたが、直に聞こえなくなったという。