811 : 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ [sage] 投稿日:2011/02/28(月) 22:15:48.50 ID:a/oDp9D00 [1/4回(PC)]
山番の話。 

里山の奥を歩いていると、横手の木立中に嫌な物を見つけてしまった。 
首吊り死体だ。結構な日数が経っているのか、すっかり蒼黒くなっている。 
饐えた臭いが鼻を突いた。 

その時、直ぐ横を煌めく群青が通り抜けた。 
蝶だ。大きい。 
昆虫の名前には割と通じていたが、その蝶の名前は皆目見当も付かなかった。 
蝶は次から次へと現れて、どんどんと死体に集っていく。 
あっという間に死体は群青色に覆い隠されてしまった。 

呆然と見ていると、蝶々が一斉に飛び立った。鱗粉を避けて顔を庇う。 
ゆっくりと顔を上げてみると、目の前にあった死体が失くなっていた。 
あれだけきつかった死臭も、綺麗さっぱり消えている。 
目の前には、ボロボロに傷んだロープが、ゆらりと風に揺れているだけだった。