733 : 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ [sage] 投稿日:2011/02/18(金) 19:23:58 ID:A7xItZeS0 [1/3回(PC)]
同級生の話。 

少年時代、一人で夜中の神社に肝試しに出向いたのだという。 
そこの神社は町と山の境界に建っており、そこから奥はもう山の領域だ。 

長い石段を半分程上った辺りで、軽い音が上から転がり落ちてきた。 
懐中電灯の灯りの中、子供用の靴が片方だけ、彼の真横を落ちていった。 
そんな勢いが付いている訳でもないのに、ただの一度も段に引っ掛かることなく、 
実に滑らかに下方の暗がりへと消えていく。 
立ち止まってみたが、上から落とし主が下りてくる気配は一向にない。 

急に怖くなった。 
この上で、靴を落とした何かがじっと待っている。闇の中で。 
一度そう考えてしまうと、もうそれ以上登ることは出来なかった。 

走り出すのも恐ろしく、ゆっくりゆっくり引き返した。 
一番下まで下りてみたが、先に落ちた筈の靴は、何処にも見当たらなかったという。