165 : 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ [sage] 投稿日:2010/12/04(土) 22:12:23 ID:1t3Sd4RO0 [3/3回(PC)]
知り合いの話。 

彼の祖父が猟師をしていた頃、奇妙な動物が出ていたのだそうだ。 
繁みの中で動く影を首尾よく撃ってみると、カンと硬い音がする。 
確かに当たった筈なのに、ザッと走り去る音が聞こえ、繁みには何も残っていない。 
ただ潰れた鉛の玉が、地面にポツリと落ちているだけ。 

そういうことが何度かあった後、遂にその生き物の姿を拝むことに成功した。 
薄い笹藪から出て来た物、そいつはヨタヨタと二本足で立つ、鼬のような動物だった。 
異様なのはその頭部だった。黒い鉄鍋を被っていたのだ。 

そいつはしばらく明後日の方を見つめるように立ち竦んでから、パッと四つ足になり 
山奥へ奔り消えた。鍋を被ったままで。 

「先達の猟師に聞いたところ、どうやらアレはナベカブリというものらしい。 
 “鍋頭”と書いてそう読むんだと。 
 名前と姿が伝えられてるってことは、昔から出没してたってことなんだろうな」 

祖父さんはそう言ってから「化かされたような気分だったよ」とボヤいていた。