748 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/11/10(水) 03:20:39 ID:J1mq4toE0 [7/12回(PC)]
小学校に上がると、お坊さんの誘いと、祖父の強い奨めで寺の敷地内で行われている剣道道場に入門した。 
門下生も多く、全国的に知れた名門だったため、練習はキツかったが、次第にのめり込んでいった。 
今思えば、それは僕を守るためであり、僕の今後を見据えてのことであったのだが、当時は無論そんなことなど考えていなかった。 

時は経ち、僕が中学生になる頃に祖父が亡くなった。 
特におじいちゃんっ子だった僕だか、涙一つ流すことはなかった。 
感性を封じられているせいだろうか、ちっとも悲しくなかったのだ。

 
750 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/11/10(水) 03:22:16 ID:J1mq4toE0 [8/12回(PC)]
葬式を終えて、静まり返った深夜に目を覚ました。 
呼んでいる。 
おじいちゃんだ。 
進むべき場所は足がわかっているようだった。 
台所。 
スポットライトのように流し部分が明るくなっていて、蛇口からは糸のように水が流れているのが遠目からでもわかった。 
一歩足を進めるごとに流れる水は勢いを増し、正面に立つ頃には、滝のようだった。



752 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/11/10(水) 03:23:39 ID:J1mq4toE0 [9/12回(PC)]
不思議と怖くはなかった。 
近くにあったコップにその水を注ぎ、一気に飲み干す。 
そうしなければいけない気がしたからだ。 
すると、後ろでバタン、とドアが閉まる音がした。 
振り返ると、ドラえもんのどこでもドアみたいな扉があった。 
もちろん、今までそんな物はない。 
先程の音は誰かが扉の中に入っていったものらしかった。 

それが祖父だということ、また、それが自分の力であることを悟って、少しだけ泣いた。 



754 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/11/10(水) 03:25:30 ID:J1mq4toE0 [10/12回(PC)]
次の日、お坊さんを訪ね、一部始終を話すと、やはりなあ、と漏らし、祖父も強い力を持っていたこと、恐らくそれが僕に引き継がれたこと、封印は昨日の件で解かれたことを話してくれた。 
なんとなく、全て知っていたような気がした。 

「もうその力を抑えることはできん。だが、そもそも抑えることこそ、不自然なもの。これからは抗うことなく受け入れてみなさい。」 

何をどうしたら良いか聞いてみると、わからん、と笑われた。 

「だがな、どうやらお前には救う力があるらしい。全てを救えとはいわん。敵わんこともあるだろう。だから、身近なものだけで良い、助けられるものに手を貸してやれ。」



764 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/11/10(水) 03:36:59 ID:J1mq4toE0 [11/12回(PC)]
帰り際に仏道に入る気はないか?と言われたが、丁重に断った。 
そりゃそうだ、と坊さんはまた笑った。 

そんなこんなで、僕は度々この扉 
(今では立派な門になっている)と、 
大なり小なりの不思議な体験をする。 

しかし、おじいちゃんにとっても、お坊さんにとってもこれは誤算だっただろう。 

僕はとんでもない臆病者だったのだ。