419 : 俺 ◆cLBpi8LhvQ [sage] 投稿日:2010/10/25(月) 13:10:14 ID:nN00/r9EO [3/7回(携帯)]
翌日夕方、俺はBと一緒に被写体の彼の家に行くことになった。
被写体の彼は独り暮らしで、大学近くの小さなアパートの一室が彼の部屋だった。
呼び鈴を押すと、彼はすぐに出て来た。
「……こんちわっす。……この人が?」
軽く挨拶をして、彼はBに尋ねた。
何だか無愛想だなと思ったが、霊感があるという他人なんて胡散臭いものだよなあと考え、気にしないことにした。
Bの紹介なんだから、と思わなくも無かった。
「そう。入っても大丈夫?」
「じゃ、スイマセン。今日は宜しくお願いします」
小さく頭を下げられたので、いやいやと言って俺も軽く頭を下げた。
その時、今まで何回か見たことがあるものが彼の左足に見えた。
夜に働いている時に何度か見た事があるもの。
一瞬、困惑した。それは本来彼に憑くはずのものでは無かったから。
けれど、それが彼に憑いている事こそが、そのまま今回の核心を物語っていた。
ああ、そういうことか、と。
それを理解して、俺は胸が悪くなった。
420 : 俺 ◆cLBpi8LhvQ [sage] 投稿日:2010/10/25(月) 13:13:53 ID:nN00/r9EO [4/7回(携帯)]
部屋に入り、とりあえず全員座ったところで、彼はおずおずとこちらを見た。
「それで、何か見えます?」
単刀直入に言うことに決めていた。部屋に入って五分も経たない内に、俺はもう帰りたくなっていた。
「死霊」
え、と被写体の彼が言うと同時に、Bもはっとして俺を見る
「形は」
「赤ん坊だな」
『それ』は今、座った彼の横に居た。俺はBに教えるようにそれを指差し、Bはそちらに目を向ける。
ややあってBの綺麗な眉が吊り上がる。
その反応から、彼女も俺と同じものを見て、同じことに思い至ったことが知れた。
「え、なんすか、なんすか!」
Bの反応を見て、被写体の彼も怖くなったのだろう。声を荒げる彼を見て、俺は白々しいと思った。
「何かって水子だよ。君さあ、子供堕ろさせただろ」
何度か見たことがある。仕事で水商売の人と接した時などにたまに見るそれが、彼の左足に憑いている。
被写体の彼は泡を食ったようにいや、と小さく呟く。
「病院でまっとうな方法で堕ろさせたのか、それともまともじゃない方法で堕ろさせたかは知らないけどさあ」
言いながら、十中八九後者だろうと俺は思っていた。
Bは後者には思い至らなかったようで、驚いたように俺を見た後、更に険を増した表情で被写体の彼を見る。
「母親はこの写真を撮った人だな?」
被写体の彼は怯えたように頷いた。
「その人、今どうしてる」
彼は言い訳じみた言葉をもごもごと言ったあと、小さく知りませんと答えた。
舌打ちをする。
「水子供養。それとその人に謝り倒せ。じゃないとヤバい」
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