416 : 俺 ◆cLBpi8LhvQ [sage] 投稿日:2010/10/25(月) 13:06:07 ID:nN00/r9EO [1/7回(携帯)]
写真Ⅰ
ジムの終わり、見てもらいたいものがあるんですと言ってBが取り出したのは写真だった。
Bは大学の友人グループで心霊スポットに行った時に起きた、ちょっとした霊障を解決して以来、
霊感持ちだということが噂になり、時折相談を持ち掛けられるようになったそうだ。
写真の鑑定もその一つで、判断に悩むとこうして俺に写真を見せてくることが度々あった。
「最近の写真だそうです」
そう言ってBが見せたのは、大学生らしい青年がサッカーをやっている写真だった。
写真から受けたイメージは、『べったりと張り付く』。
被写体となった青年は、今正にボールを蹴ろうとしているような姿勢をとっている。
恐らくは写真に写っていないゴールに向け、シュートを打とうとする瞬間なのだろう。
シュートは決まったのか? 外れたのか? と考えさせるような写真で、写真の良し悪しが分からない俺にも、
「よく撮れてんなあ」
と思わせるようなものだった。
「そうですね、けれど惜しむらくは、」
「うん」
その時、俺とBの視線は恐らく同じところを見ていた。
「欠けていること」
写真の中の青年には、左足が無かった。
左耳から、かり、という音がした気がする。
417 : 俺 ◆cLBpi8LhvQ [sage] 投稿日:2010/10/25(月) 13:08:27 ID:nN00/r9EO [2/7回(携帯)]
Bの話を総合する。
写真はサッカー部だかサッカーサークルだかに入っている男、つまりは被写体になっている男から受け取ったものだ。
よく遊ぶグループではないが、以前からよく声を掛けられていたため、内心またかと思いつつも、つい鑑定を引き受けたらしい。
こういった体の一部が透明になった写真は、なんらかの予兆であることが多いのだが、
今回の写真はどうもそういったものでは無いような気がしたために、こうして俺に相談してきたとのこと。
加えて、Bが写真を見せられた時に聞いた話が面白い。
「この写真、最初は普通だったそうです」
今にもボールを蹴ろうとする後ろに振り上げた足と、そして軸足とが最初はしっかりと写っていたそうだ。
それが今は無い。
「どうしてか分かります?」
「いや、駄目だ。ただ、何かあることだけは分かる。本人に何か変わったことはない? 左足が何かおかしいとか」
「……左足に何かがついている気はしましたが」
Bは悩むように顔を俯けた。しかし、感じたものが頭の中で纏まらないのだろう。
その様子を見て俺は言った。
「会ってみるか」
好奇心が刺激されるのだ。怖いもの知らずとか、怖いもの見たさとかではない。単純に、知りたいと思ってしまう。
怖い目には出来るだけ逢いたくないとか、取り憑かれたくないとか、それとは別の次元で知りたい経験したいと思ってしまう。
「そうなると……明日は暇ですか?」
Bは携帯を取り出し、メールを打ちながら言った。
「夜までは暇だな」
こうして、被写体の彼に実際に会う事が決定した。
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