340 : 稲男 ◆W8nV3n4fZ. [sage] 投稿日:2010/10/22(金) 22:14:47 ID:mvxwPn920 [1/4回(PC)]
一年の秋。 
その頃俺は遅刻を罪と思っていなかった。 
別に出席時数だけ取れていればいいので困ることは無かったが、一時期頻繁に遅刻をかましていた。 
原因はネットにハマったことなのだが、俺はそれをちょっとかっこいいと思っていた。 
あー全然寝てねーわー、だとか、ちょっと自慢げに言っていたような気がする。 
我ながらとんでもなく馬鹿だと思うが、とにかく一ヶ月ほど殆ど毎日遅刻していたのだ。 
大体一時間目をスルーして登校していたのだが、ある日ふと気付く。 
同じ時間に登校している女の子がいたのだ。 
いつも彼女は徒歩で、俺は自転車だったから、いつも追い抜いていた。 
白くて、細くて、なんというか、病院の窓から葉が落ちるのを眺めていそうな、そんな女の子だった。 
女の子というが、恐らく年上だった。 
彼女は同級生にいなかったから、多分先輩なんだろう。 
鮮明に覚えている。 
押せば倒れそうな後ろ姿も、ポニーテールにしていた黒い髪も、すれ違う寸前見た白いうなじも。 
追い抜いてから振り向いたことは無かったから、どんな顔をしていたのかはわからない。 
ただ、なんとなく綺麗な顔をしているように思っていた。 
ある日、俺はまた遅刻した。 
いつものように自転車を走らせていると、あの人が逆側の歩道にいた。 
いつもと違う。 
俺は少しがっかりした。 
今日は彼女の後姿を見ることが出来ない。 
俺は気になって仕方なかった。 
仕方なかったから、ついやってしまったのだ。 
俺は彼女を通り過ぎて、すぐ振り向いた。 
俺は彼女の顔が見たかった。 
俺の想像の中にいる、綺麗な顔と一致しているか確かめたくて。 
しかし、振り向いた先には、誰もいなかった。

 
341 : 稲男 ◆W8nV3n4fZ. [sage] 投稿日:2010/10/22(金) 22:17:07 ID:mvxwPn920 [2/4回(PC)]
「見たことありませんか。その人。一年じゃないみたいなんですけど」 
放課後、俺は先輩に彼女の特徴を伝えた。 
もしかしたら三年生かもしれないと思ったからだ。 
「ああ、あるよ」 
先輩は事も無げに答えた。 
俺は多少拍子抜けした。 
「あ、そうですか・・・・・・何年なんです?あの人」 
先輩は驚いた顔をしている。 
「え・・・・・・なにか」 
「いや、お前も大概にっぶいなあと思ってな。わからなかったのか。そいつがいるのっていつもあそこじゃなかったか。立体交差の、次の交差点辺り」 
その通りだった。 
「知ってるんですか。じゃあ先輩も会ったことが?」 
今度は呆れ顔だった。 
「あのな。お前、いくら同じくらいの時間帯だって、毎日毎日全く同じ場所ですれ違うのはおかしいと思わんのか」 
あ。 
俺は馬鹿だ。 
俺が彼女を見かけるポイントは、時間に関わらず同じ場所だった。 
つまり、ということは、まさか、もしかして。 
「・・・・・・えっと、そっち系ですか」 
先輩はうんうんと頷いている。 
全く考えてなかった。 
俺にあんなにはっきり見える幽霊がいるなんて。 
「いつだったかなあ、最初は。俺が一年の年にはもう居たと思う。それから、あれはずっとあそこにいるよ」 
「でも、俺にそんなにはっきり見えるなんてことありますかね。先輩ならともかく」 
先輩はにやりと笑う。 
最近わかってきたのだが、この表情をした時、先輩は俺に想像もつかないような黒い事を言う。