837 : 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ [sage] 投稿日:2010/11/12(金) 17:21:33 ID:12zXpuix0 [3/3回(PC)]
知り合いの話。 

彼の祖父はかつて猟師をしていたという。 
遊びに行った折に、色々と興味深い話を聞かせてくれた。 

「紅葉が綺麗な頃によ、見事な鹿を見つけたんだ。運が良いことに風下だった。 
 もう仕留めたモンも同然だと、逸る心を抑えながら引き金を引いたんだ。 
 でも、弾が出ねえ。ウンともスンとも反応がねえ。 
 馬鹿な今朝方手入れしたばっかりだぞ!って焦ってみたが、出ないモンは出ない。 
 そうこうしてる内に、鹿の奴は悠然と森ン中に消えてっちまった。 
 鹿がいなくなってからだわ、引き金の手応えが返ってきたのは。 
 その後は普通に山鳥なんぞ仕留めたんだがね」 

「人に聞いたら、その鹿は十二様(山の神)の分じゃないかとサ。 
 年の最初に、その一年で神さんが取っちまう幸の分量が決められるって。 
 “これは神様の分”と定められた獲物にゃあ、下の者はどうやっても手が出せん 
 ってのが理らしいんだ。 
 ヨツ(獣)だけじゃなく鳥や魚、果ては山菜まで、どうしても獲ることが出来ない 
 分があったって話だ」 

「相手が神様じゃ、綱引きしても勝ち目はねえよなぁ」 
祖父さんはさっぱりした顔でそう笑った。