378 : 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ [sage] 投稿日:2010/10/20(水) 18:40:53 ID:WAVoq6M80 [3/3回(PC)]
知り合いの話。 

山道を歩いていると、頭上から「おーい」と誰かが呼んできた。 
見上げても誰もいない。 
首を傾げていると、すぐ背後から言葉がかけられた。 

「どこに行くのだ?」 

つい反射的に「近くの里の親戚だ」と答えてしまう。 
すると見えない誰かはこう宣った。 

「腰の酒をくれるなら運んでやろう」 

確かに酒をぶら下げてはいたが、これはその親戚への手土産だ。 
「いやそりゃダメだ・・・」と返す間もなく、いきなり背中から抱き上げられる。 
目の前の風景がグニャリと溶けたかと思うと、次の瞬間、見覚えある屋敷の 
前に立っている自分に気がついたという。 

慌てて腰をまさぐったが、酒瓶は綺麗に空となっていた。 
しかもそこは、確かに親戚の屋敷ではあったけれど、その日彼が訪れる 
予定の家ではなかった。親戚違いだ。 

「間違えて配達された上に、足代までしっかり取られちまった。 
 まったく、この山の天狗様はそそっかしくて困るよなぁ」 

彼は頻りにそうぼやいていたという。