87 : 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ [sage] 投稿日:2010/10/01(金) 20:51:47 ID:PlJ4YC6p0 [1/3回(PC)]
知り合いの話。 

彼の住む町の外れに、人が寄りつかない沢があるのだという。 
山を少し入った所にあるその沢は、底の方に分厚い粘土が溜まっているらしい。 

この沢辺を歩いていると、足元に何かがベシャリと投げ付けられるそうだ。 
まだ水を滴らせた、濡れた粘土の塊が。 
誰かが握ったかのように、表面には指の痕らしき太い筋が四本浮いている。 
間違いなく水底から掬われたものだが、沢の面はどこも乱れなく静かなまま。 
辺りには自分たち以外誰の姿も見えない。 

大抵の人はその時点で逃げ出す。 
だから一体誰が土塊を投げているのかはわからない。 

「昔からあそこには鬼が棲んでいるって言われてるんだ。 
 だから誰も寄りつかないんだよね」 
さらりと彼はそう言った。