306 : 4/6[sage] 投稿日:2010/09/15(水) 12:42:55 ID:2wgnOYMq0 [4/6回(PC)]
しかし、さらにその数日後、Bさんもそれを見てしまうことになる。
その日、Aさんと一緒に事業所の正門の近くにある中華料理屋に昼食をとりに
向かっていたときのこと。突然Aさんが立ち止まり、無言で前方を指さした。
Bさんがそちらを見ると、いた。
数十メートル向こうの家の塀の上に、こちらをニヤニヤと見ている女の顔。
無性に人をいらつかせるその笑顔を見ながらBさんは数秒間固まっていたが、急に
ムラムラと怒りがこみ上げて、Bさんはそいつを問い詰めてやろうと走り出した。
しかし、女はすぐに顔を引っ込めてしまい、その敷地に無断侵入して裏まで探したが、
もうどこにも姿は見えなかった。
女が実在することが分かって、Bさんも対処を考えたが、ストーカーとして警察に
通報しようにも、何も立証するものがない。どうしたものかと数日考えていた
ところ、夜自宅にいるときに、突然Aさんから電話がかかってきた。
「助けてくれ!あいつは人間じゃない!」
「どうした!?何があった?」
「あいつが俺の部屋に来たんだ!」
「マジか!?今どうしてるんだ?」
「外に出た。お前の家に泊めてくれ!」
「分かった、ローソンのとこで待ってろ。」
307 : 5/6[sage] 投稿日:2010/09/15(水) 12:43:44 ID:2wgnOYMq0 [5/6回(PC)]
Bさんは奥さんにそのことを伝えてから、ケータイでAさんと話し続けながら車に
乗り、県道沿いのローソンに向かって車を走らせた。道中、何があったかについて
Aさんから聞いた話は次の通りだった。
Aさんが帰宅して風呂に入り、Tシャツに半パンで部屋に戻り、ベッドに腰掛けて
メールを見ようとケータイを手にしたとき、それが目に入った。ジャケットや
シャツなどを掛けているハンガー(平行な棒に洋服をかけるようなもの)の、
服と服の間から、再びニヤニヤ顔だけを出していたそうだ。しかし、並んだ洋服の
下に見えるはずのそいつの下半身が見えない。それにビビリながらも、怒りの方が
まさって、Aさんは「てめえ!」と叫びながら、脇の洋服をどけた。
そこには顔しかなかった。ニヤニヤと笑う女の顔だけが、空中に浮いていた。
転がり出るように部屋を出て、手に持っていたケータイでとにかくBさんに電話を
かけたのだという。
そして、そこまで話したところでAさんは突然黙った。
「…おい、どうした?」
Bさんが聞いたとき、「うおおぉぉぉぉぉっ!」という叫び声と激しい衝撃音を最後に、
Aさんは何も言わなくなった。
308 : 6/6[sage] 投稿日:2010/09/15(水) 12:44:44 ID:2wgnOYMq0 [6/6回(PC)]
激しい胸騒ぎを憶えつつ、Bさんは車を飛ばしてコンビニに着いたが、Aさんの姿は
そこにはなかった。車においてあった懐中電灯を手に、走り回って周辺を探した
ところ、例の橋の歩道に落ちているケータイを発見し、まさかと思いながらその下の
川面に懐中電灯の光をあてたところ、倒れているAさんを見つけたという。
駆けつけた警官にも、その後の事情聴取や現場検証でも、Bさんは何度もその
一部始終を話したが、取り合ってはもらえなかったそうだ。(むしろ疑われたようだと
言っていた。)
その女の正体も全く分からないし、なぜAさんがそんな目に遭ったかも全く分からない。
その女を見てしまったBさんも同じ目に遭わないかが心配でならないが、今のところ
大丈夫のようだ。それにもまして怖いのは、自分の住んでいるこの建物にそいつが
来たらしいという話だったりする。今のところ何も見てはいないが。
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