575 : 二人の親友 旧々吹上トンネル1[sage] 投稿日:2010/09/05(日) 16:39:17 ID:4VKz7JIe0 [1/9回(PC)]
俺にはオカルト好きのてっちゃんとぎゅうじというあだ名の親友が二人いる。 

「なぁ、こんな話知ってるか?」 
てっちゃんの家でゴロゴロしていると、親友の一人のぎゅうじがそう言った。 
こいつは怪談話が好きなやつで、どこかで聞いたことあるような話や都市伝説を嬉々としていつも話してきた。 
今日のお題は俺たちが住んでいる市にほど近い場所のうわさ話で、今は廃墟になった小料理屋で昔惨殺事件があり、 
そこで殺された人の怨霊が、その近くの廃トンネルに出るというものだった。 
あぁ、よくある話だなぁ、と思っていると、「いいねぇ、じゃあ後でそこ言ってみようぜ」ともう一人の親友のてっちゃんが言った。 
こいつは思い立ったが吉日野郎で、いつもいきなりどこどこに意向だとか、試してみようとか言いだす奴だった。 


「じゃぁ俺準備するわ」 
そう言ってぎゅうじは人の家の中をあさり始めた。 
こいつは礼儀ってものを知らない。 
そう俺が思っていると、てっちゃんは「楽しくなってきたな」とつぶやき、一人耳袋を読み始めた。 
自分の家が勝手に漁られているのに無視かよ。 
こいつは常識が足りないな。 
俺はそう思いながら、特にやることもないので漫画の続きを読み始めた。 

「おい、そろそろ行くぞ」 
そうてっちゃんに起こされた。 
いつの間にか眠ってしまったようで、時間は十二時を回っていた。 
眠い目をこすりながら体を起こすと、ぱんぱんになったボストンバックを担ぎ、はしゃいでいるぎゅうじが目に入った。 

駐車場に止めてるてっちゃんのぼろぼろの軽自動車には、 
運転席にてっちゃん、助手席に俺が座り、ぎゅうじは荷物と一緒に後部座席に押し込んだ。

 
576 : 二人の親友 旧々吹上トンネル2[sage] 投稿日:2010/09/05(日) 16:40:10 ID:4VKz7JIe0 [2/9回(PC)]
目的は埼玉県に隣接する東京のはじっこの市だ。 
僕らの住んでる市からはそう遠くないが、それでも入り組んだ目的理のトンネルまではたっぷり一時間以上はかかった。 
その間てっちゃんは他の怪談話をしゃべり続け、ぎゅうじは後部座席で遠足のようにはしゃいでいた。 

「ついたぞ」 
そう言って山道の安全地帯にてっちゃんは車を止めた。 
街灯もほとんどない山道は、能天気なぎゅうじと一緒でもそれらしい雰囲気があった。 

「この獣道みたいなところを登ればすぐだよ」 
てっちゃんはそう言うと、懐中電灯の明かりをたよりに一人で歩いて行った。 
バックからもたもたもうひとつ懐中電灯を取り出すぎゅうじを待って、俺もてっちゃんの後追った。 

そこは獣道と呼ぶには道幅が広かったが、泥と落ちた木の枝のせいでひどく歩きづらかった。 
てっちゃんに追いつくことができずにいるまま、僕とぎゅうじは噂の廃屋の前までたどり着いた。 

「おい、あれ人魂じゃねぇ?」 
懐中電灯を俺に奪われ、俺のシャツの裾をつかみながらあとをついてきたぎゅうじが、俺の肩越しに指をさしながらそう言った。 

見れば確かに廃屋にわずかながら残ったガラス越しに、何か光るものが見えた。 
ただ、長年風雨に晒され濁ったガラス越しからは、ぼんやりとした光しか見えなかった。 
「おせーよ」 
そう人魂が僕らに言った。 
人魂の正体は先行して廃屋探検をしていたてっちゃんのたばこの光だった。 

その後僕とぎゅうじも廃屋を探検したが、抜けた床板の下にはエロ本がごろごろ転がっているは、 
そこらじゅうに真新しいポテトチップスの袋などのごみが転がっていて、とてもじゃないが何か期待していた雰囲気ではなく、 
壁に書いてあった「悪気羅刹」の下に「悪鬼羅刹だ馬鹿」と落書きをしているてっちゃんを促し、僕らは早々にそこを後にし、目的のトンネルに向かうことにした。



577 : 二人の親友 旧々吹上トンネル3[sage] 投稿日:2010/09/05(日) 16:41:41 ID:4VKz7JIe0 [3/9回(PC)]
目的地のトンネルは、廃屋から数十メートル程進んだところにあった。 

入口は何重にもフェンスと有刺鉄線で囲まれ、入口の扉には南京錠がかかっていた。 
しかしフェンスと有刺鉄線は切断され、南京錠はどうやったのかわからないが外れてぶら下がっていた。 

「偉大なる馬鹿野郎の先人に感謝」 
そうてっちゃんは言いながらフェンスと軋む鉄製の扉をこじ開け中に入って行った。 
僕とぎゅうじも今度は遅れずにそのあとに続き中に侵入した。 
「ペンチとガスバーナーが無駄になったなぁ」 
ぎゅうじのそのつぶやきを僕は無視した。 

トンネルの中は石がむき出しになっていて、方々から染み出す水のせいでどこもかしこも水浸しだった。 
その様子から、このトンネルは岩盤をくりぬいて作ったのだと僕は想像した。 

「おっ、ここ座れるな」 
てっちゃんはそう言うとトンネルの中ほどで小高く盛り上がり、水につからず乾いている地面を懐中電灯で照らした。 
その場所に着くとぎゅうじがバックからビニールシートを取り出し、その中央に長い蝋燭を立て火をつけた。 
こいつは用意がいいというか、なんというか。 

「さて、始めようか」 
てっちゃんはそう言うと腹から「百物語」と書いてある本を取り出した。 
「まず俺から読むぞ」 
そう言って読み始めようとするてっちゃんを制止し、俺が眠っている間に何を計画していたかを聞いた。 
どうやら、ただ行っても面白くないと思った二人は、目的地で百物語を交互に読み、より雰囲気が出るようにと考えていたらしい。 
実に迷惑な話だ。 
とはいえ、このまま水浸しのトンネル内にただじっとしているのも気がめいるので、俺はしぶしぶその提案に参加することにした。