255 : 雨田 ◆oyR5OGXLW2 [sage] 投稿日:2010/08/21(土) 02:39:03 ID:vVV4II/u0 [1/3回(PC)]
【視えないモノ】1/3 

大学へ入学してからあっという間の夏。私は友人たちと久しぶりに会うことになった。 
集合場所に着くと、誰が呼んだのか、高校時代によくつるんでいた先輩も来ていた。 
彼は幼いころに両親が再婚したとかで、年齢が一つ上とは言え、かなり大人びていた印象だった。 

お決まりの花火も一通りおわり、これまたお約束の「肝試しに行こう」が誰かの口から飛び出た。 
私たちの高校から数十分車を飛ばしたところに廃病院があるから、そこへ行こうということらしい。 
深夜のノリで特に反対もなく――先輩は少し不満げに見えたが――廃病院に向かうことになった。 

しかし楽しげな気分もどこへやら、到着したとたん、廃病院の寂れた雰囲気が押し寄せてきた。 
アルコールの回った怖いものなしの数人を除いて、大半はびくびくしながら院内をまわっていた。
256 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/08/21(土) 02:39:41 ID:phOy9uT/0 [1/1回(PC)]
>>230わらたwwwかわいい絵だなwwww

 
257 : 雨田 ◆oyR5OGXLW2 [sage] 投稿日:2010/08/21(土) 02:39:59 ID:vVV4II/u0 [2/3回(PC)]
【視えないモノ】2/3 

しばらくぞろぞろと歩いていると、前方のほうから「ヒッ」と短い悲鳴が飛んできた。 
懐中電灯の光の先には、がらんとした病室の天井から、輪になった紐がぶら下がっていた。 
「これってやっぱり…」と誰もが思っていると、おもむろに先輩が紐へ歩み寄り…… 

……思いっきり紐を引っ張った。廃病院に響く私たちの悲鳴。 

「落ち着いて!」と先輩が鋭く言う。「これは本当に首吊りに使われたものじゃないよ」 
それでも半分パニックに陥っている私たちを先輩はなだめる。 
「本当にここで誰かが首を吊ったのなら、足場になるようなものが無いといけない。 
 それに死体があった痕跡も無い。誰かが片付けたなら床に跡が残るはずだけど、それもない。 
 第一、紐が新しすぎる」 
探偵顔負けの推理で、得意げに言う。 
「というわけで、これは最近ここに来た誰かのしたイタズラだよ」 
空気の抜けたように恐怖感が消え去り、というか白けてしまったが 
それでも満足した私たちはそれぞれ家へ帰ることになった。 
帰る手段の無かった私は、先輩の車に乗せてもらった。



259 : 雨田 ◆oyR5OGXLW2 [sage] 投稿日:2010/08/21(土) 02:41:00 ID:vVV4II/u0 [3/3回(PC)]
【視えないモノ】3/3 

「本当に怖いのは、存在しない幽霊なんかじゃなく 
 無いものを有るように見せる、生きてる人間のほうだよ」 
私の自宅の近くまで来たとき、先輩は運転席で呟いた。 

確かに、人間のほうが怖いのかもしれない。 
有るものを無いように見ざるを得ない人間のほうが。 

ミラー越しに後部座席の女を見てから、私は車を降りた。