216 : 宿題終わったか ◆ZzqpUXstowNJ [sage] 投稿日:2010/08/21(土) 01:39:27 ID:9FhPPqS70 [9/29回(PC)]
【うずくまる】 1/3            代理投稿 ◆100mD2jqic 

「この間、お前を連れて行った里山、あるだろ。 
 そう、昼間なら女子供がスニーカーでも上れる山。 
 あそこ、トレーニングに使ってるんだよ。本修行の前の体作りにさ。」 
「あー、あそこかあ。確かに本道は女子供でも余裕で登れるけどさ。 
 お前が連れてった狭い所は本っ当に、幅30cmもない崖っぷちで、 
 通り過ぎるのすら厳しいよなwもう二度と行かねーよw」 
「あそこで若い頃、やられちまったんだよ。」 
「ん?お前が?だせえwwww」 

トレーニングは雨の日も欠かさない。行(ぎょう)の前は昼夜を問わず行う。 
…ああ、前にレンジャーの人の話を聞いた事があるが、そんな感じ。 
ひたすら山の中を彷徨(さまよ)い、気配を殺し、迅速に移動する。 
装備するのが銃器ではなくて、せいぜいロープと小刀、数珠程度、 
って違いだ。後は気合い。 
ただ、ちょっとその日は凄い雨だった。雨粒で地面が削れる程度には。 
ひたすら走り、木を登り下りして、藪をこいで、例の30cm幅の所に来た。 

その先に、うずくまってる女がいた。 

足でもくじいたのか。 
近寄ろうとした。

 
217 : 宿題終わったか ◆ZzqpUXstowNJ [sage] 投稿日:2010/08/21(土) 01:40:26 ID:9FhPPqS70 [10/29回(PC)]
2/3 

強く、腕が引っ張られる感覚がした。 
「気にしたらいかん!」 
壇中(だんちゅう)が沸き立つような感覚、知らぬ振りでその先を進む。 
その後崖を登り、やりすごし、また走る。走りながら、六根清浄(ろっこんしょうじょう)を唱える。 
ざわめく陰。前を覆う深い闇。何かをどけながら走る感覚。邪魔が。 
邪魔するものだからジャマー、ってなあ。 
ぃでっ!なんでそこで掌底(しょうてい)を後頭部に入れるかな。ひでえな。 
まあねえ。いくら雨の中ったって、変な闇だった。普段と違って、先が 
見えないんだな。雨の中でもあるはずの気配、って奴が。そん代わり、 
さっきの「女」の気配がある。 

…女…? 

俺は、なんで女だと思ったんだ。男では、なかった。小さかった。 
では、着衣は?柄は?髪型は?年恰好は? 
まてよ、なんであの30cm崖で俺は「先に進めた」んだ? 
鳥肌が、一気にたった。立つと同時に、斬った。印なんざ組むヒマもねえ。 
斬った。嫌になるくらい斬った。 
そして、恥ずかしい話だが、逃げた。



218 : 宿題終わったか ◆ZzqpUXstowNJ [sage] 投稿日:2010/08/21(土) 01:41:09 ID:9FhPPqS70 [11/29回(PC)]
3/3 

翌日から一週間ほど、俺は高熱を出して寝込んだ。 
お師(し)さんが珍しく来て、がっつりウマイ凝った手料理を作ってくれた。 
これ作ったのが女で、しかも若かったら、その場で嫁にするレベルw 
「おまえ、会ったな?」 
「はい」 
「そいつは斬るものじゃないんだ。これで限界が判っただろう。しばらく大人しく寝とけ」 
「先生、だけど、あれを放っておいたら他の人にも害が出ます」 
「縁(えにし)がなければ出会わんよ。それに、黄昏過ぎてから山に入るのは 
 自業自得だ。人には出来る限界がある。」 
「今回、お前が出合った理由を考えておくんだな」 
と言って、帰って行った。 

ああ、女? 
さあねえ。たぶん、今頃、どこかに出てるんじゃねえかなあ。 
山に出るとは限らないからなあ。 
よく目を凝らしてみると、都会にも、いろいろ、なあ。出てるからなあ。