200 : 無月 ◆rke4WFVdV6 [sage] 投稿日:2010/08/21(土) 01:16:26 ID:xDOQeNBMO [1/5回(携帯)]
釣りをするようになって、足を延ばすようになった場所がある。 
そこに行く途中のある道で、必ず同じ車とすれ違う、と気が付いたのは、3度目に足を運んだ時だった。 
時期も違う、時間も違う。それなのにすれ違っても、普通なら、
地元の人かなぐらいにしか思わなかったかもしれない。 
 
でも、地元の人ではないという確信があった。「わ」ナンバーだったからだ。 
四度目にすれ違った時、乗っているのは幸せそうな家族連れだと気が付いた。 
五度目に足を運んだ時、手前の街で車を降り、地元の人たちに話を聞いてみた。 
「一昔前、この道の先で事故があり、家族連れの観光客が亡くなった」という話を聞いてから、近くの商店街で花を買って、歩いてその場所を訪れてみた。 
 
海沿いの道。見晴らしの良い高台。緩やかなカーブを描く道の脇に、桜の古木。 
よくよく見ると、足元の草に紛れてワンカップの空き瓶が転がっていた。 
花を供えて手を合わすと、何処からともなく「ありがとう」と聞こえた気がした。 
風の音に紛れたような、小さな声。振り返ってみても、誰も居ない。 

それ以来、同じ場所で「わ」ナンバーの車とは、すれ違っていない。