57 : 菊 ◆wNcSpqKeBg [] 投稿日:2010/08/20(金) 22:17:13 ID:o7f7I/ys0 [2/6回(PC)]
「口笛が聞こえる」1/2 

私がまだ田舎にある実家にいた頃の話。 

何が切っ掛けかは忘れたが、夜中に誰かが口笛を吹いているのに気がついた。 
時間はたいてい午前1時過ぎ。一定の高さで息継ぎをする 
様子もなく、10分~20分間絶え間なく。それが毎日。 
最初は鳥の鳴き声かとも思ったが、あんな声で鳴く鳥を聞いた事はないし 
だいいち時間が時間だ。気味悪く思いつつ、布団を被って無視していた。 

口笛に気がついてから、6日ほど過ぎた晩のこと。 
夜中にふと目が覚めると、なぜか布団の上で正座している自分がいた。 
目の前には赤い光を放つ、フットボール大の光の玉が浮いている。 
ギョっとして思わず身構えると、発光体は赤い尾を引きつつ 
窓の外へスーっと消えていった。  

その日の夜は、妹の部屋へ転がり込んだ。

 
58 : 菊 ◆wNcSpqKeBg [] 投稿日:2010/08/20(金) 22:18:40 ID:o7f7I/ys0 [3/6回(PC)]
「口笛が聞こえる」2/2 

発光体を目撃してからも、相変わらず口笛は聞こえてきた。 
けれど、発光体を見た以外、他に何が起こったわけでもない。 
“口笛が聞こえる”ことにも慣れ、しだいに気にも留めなくなっていた。 

発光体を見てから10日ほどたった、酷く風の強い晩のことだ。 
またしても、唐突に夜中に目が覚めた。 
私はパジャマ姿で裸足のまま、真っ暗な林の中に立っていた。 
木立の中、呻る風にのって口笛が聞こえる。 
恐怖で混乱する頭をどうにか落ち着け辺りを窺うと、どうやら 
実家のすぐ隣にある森の中にいるらしい。 
走り出したい気持ちを抑えて、そろそろと家へ向かった。 
走ったら事態が急展開してしまいそうで、恐ろしかった。 
ひたすら足元を見て歩いている間、口笛はずっと私の周りを巡っていた。 

その晩を最後に、口笛が聞こえることはなくなった。 
けれど、もしもまた聞こえたらと思うと、実家に帰省するのが恐ろしい。 
次にまたあの口笛に呼ばれた時、もしも目が覚めなかったら 
私はどこに連れて行かれるのだろうか。