15 : カンテン ◆uWa8c9Ru2g [sage] 投稿日:2010/08/20(金) 21:14:41 ID:NzwSnF7x0 [5/14回(PC)]
「百物語、ひいてはKの思い出」 1/3                   代理投稿 姑 ◆100mD2jqic 

オカルト板で百物語をする、という書き込みを見て、 
私は高校時代にした百物語のことを思い出しました。 
100話語り終えると怪異が起こるといわれている、百物語。 
私達がした百物語でも、それは起こりました。 
といっても、語り手が1人増えていた、といった類の事ではありません。 
もっと、恐ろしい事です。百物語は、同級生8人としました。 
語られた怪談はほとんどがどこかで聞いたことがあるような内容でしたが、 
蝋燭以外何の光も無い、暗い部屋の中で聞くとかなりの恐怖感がありました。 
100話語り終え、もう解散しようとした時、Kが突然叫び声をあげました。 
Kは、集まった8人の中で唯一霊感があり、この百物語の発案者で、 
百物語の会場はKの部屋でした。Kの叫び声を聞いてみると、こう叫んでいました。 
「マキノが来る! 殺される!」マキノ、と聞いて思い出しました。Kが語った怪談を。 

Kが幼い頃、近所にマキノという男の子が住んでいて、よく一緒に遊んでいたが、 
マキノは交通事故で死んでしまった。するとその翌日から周りに誰もいないはず 
マキノの声が聞こえるようになった。大体、こんな話でした。 
急に叫び始めたKを、私たちは取り押さえました。 
少しして叫ぶのをやめたKですが、やがてこんな事を呟き始めました。

 
16 : カンテン ◆uWa8c9Ru2g [sage] 投稿日:2010/08/20(金) 21:15:26 ID:NzwSnF7x0 [6/14回(PC)]
2/3 

「なあマキノ、聞いてくれ……すまなかった、あんな事をして……。 
俺はお前が憎かった。マキノ、俺は見てしまったんだ……。 
お前に、俺の母親が性的な行為をはたらいている所を……。 
俺は、その時の母親の顔を覚えている。醜い獣のようで、そして俺の前では 
決して見せないような満たされた顔……。その時俺は、お前に母親を取られたと 
思った。もちろん、お前は小さいから俺の母親から何をされているのか分からず、 
ただされるがままだったんだろう。しかし、俺には母親が何をしているか 
分かってしまった。次の日から、俺のお前に散々嫌がらせをした……。 
殴る蹴るの暴力を加えたり、お前の家のポストに虫を入れたり、自分がした悪事を 
お前のせいにしたり……。それでも、お前は俺の所へ懲りずにやってきて、 
俺の母親に汚された体を俺に押し付けたりした。その時、思った。 
お前を殺すしか無いと。そしてお前と遊んだ帰り道、俺はお前の背中を押した。 
お前の体は車道に投げ出され、走ってきたトラックに跳ねられた。 
俺は、すぐに走って逃げた。トラックの運転手は、お前が同年代の男子、 
つまり俺と一緒にいた事を証言した。その事を聞きつけ、お前の友達である 
俺のところへ警察が来た。トラックの運転手は、事故のときお前の傍にいたのは 
間違いなくこの子だ、と俺を指差した。俺は警察に、Kが突然道路に飛び出して 
車に跳ねられた、それを見て怖くなったので逃げた……そう話した。 
トラックの運転手も俺が突き飛ばした所までは見ていなかったらしく、 
警察は納得して帰っていった。マキノ、本当にすまなかった……。 
お前を殺した挙句、その事実を隠し、果てはお前の死を怪談話として語った。 
自分が殺したという事実を伏せて……。許してくれマキノ、許してくれ……」



17 : カンテン ◆uWa8c9Ru2g [sage] 投稿日:2010/08/20(金) 21:16:09 ID:NzwSnF7x0 [7/14回(PC)]
3/3 

最後の方は涙声になり、土下座しながらKは自分が犯した罪を語りました。 
私たちは唖然とし、掴んでいたKの体を離してしまいました。 
するとKは虚空を見つめ、再び叫びました。 
「許してくれ! 許してくれ! 俺を殺さないでくれ! 頼む!」 
私たちは再びKの体を取り押さえようとしましたが、Kは何かに取り付かれたような 
凄まじい力でそれを振り払いました。その力で、私は壁に強く頭を打ち付けて 
しまいました。薄れていく意識の中で、私は走って部屋を出て行くKの姿を見ました。 

少しして、目が覚めました。皆が心配そうに私の顔を覗きました。 
私はまだ少し曖昧な意識の中で、「Kはどうしたの?」と皆に聞きました。 
1人が、「追いかけたけど見失った。どこに行ったのか分からない」と言いました。 
そのまま、しばらく私たちは黙っていました。やがて、そろそろ帰ろうという事に 
なりました。Kの事は心配でしたが、こうしていても埒が明かないと思い帰りました。 

帰るとき、Kの母が心配そうな顔で立っていました。Kの携帯電話にかけて 
みましたが、つながりませんでした。不安と恐怖が混ざり合い、その日は一睡も 
出来ずに夜を過ごしました。次の日、衝撃的なニュースを聞きました。 
あのKが母親を強姦した後刺し殺し、そしてトラックに轢かれたというものでした。 
聞いた話ですが、Kがトラックに轢かれて死んだ場所は、マキノという男の子が 
死んだのと同じ場所だったそうです。昨日、Kが死んだ場所を訪れました。 
事件以来避けていた場所ですが、いつかは行かないといけないと思っていたので、 
百物語に自分の体験を書き込むのがいい機会だと考えました。 
Kとマキノが死んだ場所。そこには2つの花束が寄り添う様に置かれていました。 
<了>