56 : 1/3[sage] 投稿日:2010/08/11(水) 14:56:09 ID:cIrISmO80 [1/4回(PC)]

ある夏の夜の事でした。私は彼とドライブの帰り道。私は助手席に座っていました。 

道は雨上がりで霞掛かっていて薄暗かったんです。 
彼は見通しが悪いにもかかわらずスピードを出していたので、 
「少しスピードを落として」と彼に言うと「大丈夫」とこちらを向いた瞬間でした。 

突然ライトに映し出された幼稚園児程の女の子は一瞬にしてバンパーに跳ね上げられ、 
フロントガラスに顔をぶつけ後方の闇へ消えて行きました。急ブレーキをかけてもすでに遅く、彼は肩で息をしていました。 

私は彼に「どうするのよ?」と言っても返事はなく、固まってしまい後ろを見ませんでした。 
「ねぇ?」と泣きそうになりながら彼の肩を触ろうとすると、彼は「うるさいっ」と叫び車を発進させました。 
目は血走って呼吸は荒く今まで見たことのない彼がそこにいました。 

私の家の近くで車を停めた彼は私の肩をつかんで「誰にも言うなよ。絶対に誰にも言うなよ!」と正気じゃない顔で私に迫って来たので、 
思わず「うん」と応えてしまいました。一人暮らしの部屋に戻った私は眠れない夜を過ごし、翌日は仕事を休みました。 
どうしても新聞とニュースは見れずにいました。

 
58 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/08/11(水) 15:06:32 ID:cIrISmO80 [2/4回(PC)]
それから彼の態度が一変します。 
仕事をしていてもメールで「会社で誰かに言ってないだろうな?」とか 
残業で遅くなると「今どこで何をしてるんだ」「仕事終わったなら迎えに行く」と毎日の様に拘束されました。 
以前の温和で優しい彼ではなく私を見る彼の目は猜疑心に満ちていて、子供を轢いてしまった事実から逃げ出したいプレッシャーと 
私の裏切りを許さない彼の言動に怯えてしまい『別れるなんて言えば何をされるか分らない』と思うほど彼は常軌を逸していました。 

程なくして彼が突然私に結婚を迫ってきました。断ったら何をされるか分らないと思った私はプロポーズに応じてしまいました。 
彼は『秘密を知っている人間は逃がさない。結婚すればしゃべる事もないだろう』という気持ちからでしょう。 
そうすることで精神的な平静を守ろうとしたんだと思います。 
私からすれば地獄です。既に彼への愛情よりも恐怖に支配されていて今すぐにでも逃げ出したいのに彼が恐ろしくて逃げ出せない。 
しかも結婚までしてしまったら一生あの子を轢いてしまった罪悪感からも彼の監視の目からも逃げ出せなくなるのです。 

ある時、同僚が私の異変に気付きました。その同僚は前から私に気があると噂の人で、私も少し気になる人でした。 
勿論、恐怖からあの子を轢いた事は話せませんでした。私はその状況から逃げ出したい一心で同僚にお願いをしました。 
「どうか私と駆け落ちをして欲しい。」と必死で頼みました。「どうしても今の彼と結婚したくない」と。 
最初は流石に驚いた同僚も私の必死さにただ事ではない事情があると思ったらしく 
それ以上は詮索せず私の話を受け入れてくれました。 

すぐにでも駆け落ちをしたかったのですが退社時には迎えに来るし突然家に現れて泊まっていったり 
気づくと朝まで家の前で見張ってたりと殆ど休むまもなく監視されていたので私には逃げ出す暇もありませんでした。 
あるとしたら結婚式の前の晩に実家に泊まる時です。普段は実家への帰省も止められていたのですがその時だけは許してもらいました。 

そして結婚式前夜、両親が寝静まるのを確認して「本当にご免なさい」と思いつつも実家を飛び出し同僚の彼の待つ車に飛び乗りました。 
両親に対する申し訳なさもありましたが、それ以上に彼から逃がれられた事に安堵して涙が止まりませんでした。



59 : 3/3[sage] 投稿日:2010/08/11(水) 15:08:59 ID:cIrISmO80 [3/4回(PC)]
その後彼はというと、結婚式場に来ない花嫁の私を待ち続け、途中からはお酒を飲み親族に止められながらも大暴れし、 
酩酊しながら車に乗って逃げるように式場を後にしました。 
そして県道○○号線のカーブを曲がり切れず、民家の壁に激突して死んでしまいました。 

私は同僚の彼と駆け落ちをし、子供も生まれ小さいながらも幸せな家庭を築くことができました。 
風の噂で駆け落ちした結婚式の日に彼が死んだと聞きました。複雑でしたが今の私には救ってくれた愛すべき主人と守るべき子供がいます。 
後悔するよりも今は大事なものを守っていこうと思っています。 

そんなある日のことです。娘の4歳の誕生日でした。ケーキとかいつもより少し腕を振るった料理を用意しました。 
主人は帰りが遅いので二人でハッピーバースデーを歌い娘がふぅっとロウソクの火を消します。 

私「おめでとー」 
娘「ありがとー」 
私「はい!プレゼント!」 
娘「うわぁ!ありがと!!」包装紙を開け始める娘。 

娘「あのね、おかあさん」 
私「なに?」 

娘が包装紙を開けながらこう言いました。 
娘「おとうさんが来てよかったね」 
私「!?」 

包装紙を開ける手を止めて私の目をじっと見つめます。 
『おとうさんが来てよかったね』 
そう話しかける娘の顔は見たことのない表情…どこかで…。 

「彼が轢いたあの子だ。」と思った瞬間、身も心も凍りつきました。 
娘は何事もなかったように遊び始めました…。 
どうして娘がそんなことを言ったのか、怖くて訳も聞けませんでした。 
もちろん、娘も主人もあの事は知りません。駆け落ちも娘は知りません。 
主人があの日迎えに来てくれなかったら、あの子の呪いで彼と一緒に事故死していたのでしょうか?