3 : ◆7QPLwJZR/Ypf [sage] 投稿日:2010/06/06(日) 21:26:19 ID:9Oh+BHxc0 [1/6回(PC)]
"与太話" 

「なーA」 
「なんすかMさん」 
「自分のこと人間だって思い込んでる、人形の話って知ってるか」 
「あー有名なやつですね」 
「ネットとかでもあるわな。夫を失った奥さんが、夫の代わりに人形を大事にしてたらってやつ」 
いつものことながら大の大人二人が、午後も早くからファミレスで 
チョコパフェを食いながら駄弁っていた。外では蝉が五月蝿い。 
「まーよくある話よ。人の形をしたものには魂が宿りやすい」 
「でもMさん、あの話って"常識"のちょっと隣にあるから面白いんですよね」 
「まあな。仮にその人形がバリバリ動いていたとしても、奥さんの前とかだけだからな」 
「話では、寺社で焼かれる前に頑張ってこっそり逃げようと動いてたのを、見つけてビックリみたいな。 
 で、焼かれてるときに怖くて叫んでいるのを聞いて、さらにビックリみたいな」 
「そうそう。あ、ちょっとトイレ行ってくるわ」 
俺も飲み物がなくなったので、ドリンクバーにお茶を入れに行く。 
五分くらいボーッとしていると師匠が戻ってきた。

 
4 : ◆7QPLwJZR/Ypf [sage] 投稿日:2010/06/06(日) 21:28:34 ID:9Oh+BHxc0 [2/6回(PC)]
「んで、話の続きなんだけど…大きな街とか行くと割と良く見かけるだろ。 
 人間のふりした人形が歩いてるやつ。とても精巧に似せたやつが」 
「俺も何度か見かけたことありますけど、あいつら別に隠れてないですからね」 
「そうそう、太陽の下、人間の中を堂々と歩いてんの。むかつくよなぁ」 
「まぁそれはいいですよ。彼らにも色々と事情があるんでしょうから。 
 で、他にもあるんでしょ。面白い話が」 
フーッと師匠は一息ついてから話を始めた。 
「逆もあるって、知ってるか」 
「どういう意味ですか」 
「前置き、超長くなるけどいいか」 
「まぁ、今日は暇だしいいすよ」 
「椅子は人間が椅子と認知するから、椅子になるという話しがある」 
「ありますね」 
「あとこんな言葉もある。"我思うゆえに我有り" 
 太陽の下、人ごみの中歩いてる人形どもはさ、自分は"人"だということを一片も疑わないし 
 常に他の人間たちからも"人"として認知されているわけだ。 
 だって溶け込みすぎてて誰も簡単には"人形"とは思わねーもん」 
「まーそうすね」 
「術者というか、中には無意識で術をかけるやつもいるだろうが、 
 まずそいつらは時間をかけて、人形に"自分は以前から人間である"という意識と、 
 とりあえず最低限人前で"人"として動ける力を与えるわけだ」 
「ほいほい」 
「それが上手くいったら、今度は大都会の雑踏の中にでも放り込む。 
 その人形は"人"として、多数の人間の視線を浴びながら、雑踏の中を歩く。 
 まあ奴らはパッと見は分からないから、周りは"人"として認知する。 
 多人数から"人"として認知されて人形はさらに人らしくなる。その繰り返しだ」 
「そんな感じでしょうね」