533 : 4/10[] 投稿日:2010/04/02(金) 02:56:12 ID:KLj3yh2Q0 [4/10回(PC)]
林からどうにか抜け出すことができた俺。公園に帰り着きしばし呆然としていると 
少し遅れてAが戻ってきた。 

「他のやつらは?BとCとさくらは?一緒じゃないか?」 
Aにきつめの口調で問われ、一人で逃げてきたことを後悔しつつも、会っていないことを 
伝える。Aは舌打ちをすると、一緒に探しに行くよう俺に求めた。 
だがさすがのAも怖かったのか、懐中電灯を落としてきたという。公園から一番家が近い 
俺が、懐中電灯を取りに戻り、その後再度、林に入ることとなった。 

家から懐中電灯を持って、公園に戻ったときには、Cも公園に命からがら辿り着いたところ 
だった。Cも俺と同様、Bとさくらは見ていなかった。更に、探しに戻るのも嫌だと言うC。 

「言いだしっぺはお前だろ!」AがCを睨み付ける。 

Cはばつが悪そうに、「悪かったよ・・・」とAに詫び、続けた。 
「でも、俺見たんだよ。女みたいな影がさ、塚の後ろから出てこようとしてんのをさ・・・」 
普段悪ぶって、俺らを鼻で笑う態度のCはそこになく、今にも泣き出しそうな顔をしている。 
「女が顔を上げようとしたとき、Bが叫んだから『やべぇ!』って思ってさ・・・」 

それを聞くと、俺も先刻の光景を思い出し、行くことが躊躇われた。 


534 : 5/10[] 投稿日:2010/04/02(金) 02:57:09 ID:KLj3yh2Q0 [5/10回(PC)]
行くことを拒むC、行って2人を探すことを主張するA、どっちつかずの俺。 
3人が膠着状態となっていた時、土まみれのBがとぼとぼ歩いてきた。息は乱れ、Tシャツは 
伸び、あちこちから血も出ている。 

大丈夫か、と駆け寄り、さくらは、とBに問いかける。 
Bは泣きながら「わかんない」と答えるだけだった。 

それぞれの親に事情を話し、警察にも連絡して、その日の夜は町内総出でさくらの捜索が 
行われたが、行方はわからなかった。件の塚周辺も重点的に捜索されたが、手がかりさえ 
何も見つからず、その後何週間にもわたって捜索は続いたが、さくらは見つからなかった。 

俺らも自発的に毎日、林に集まってはさくらを探した。1週間もするとある程度の覚悟は 
できていたが、「さくらを探す」のであって「さくらの亡骸を探す」のではない、と 
自分に言い聞かせ、探し続けた。 

さくらが見つかったのは翌年の春、桜の咲く頃だった。 



536 : 6/10[] 投稿日:2010/04/02(金) 02:58:23 ID:KLj3yh2Q0 [6/10回(PC)]
さくらは林の出口付近で、白骨化した状態で見つかった。衣服と持ち物からさくらだと 
確認された。くまなく探したはずなのに、なぜ見つけてやれなかったのか。俺らは 
悔やみながら、葬儀に参列した。 

さくらのご両親は、俺らの事を決して悪く言わず、娘の良き友達として接してくれた。 
それがどれ程辛いことか、当時の俺らにも痛いほどよくわかっていた。 
Aはご両親に深々と頭を下げ、俺らが事前に決めておいた、さくらの弔いの為のお願いを始めた。 

「さくらさんのお骨を、分けて頂けますか・・・?」訝しげにAを見るご両親。 
「5人でよく遊んだ公園の、桜の木の下に埋めてあげたいんです」俺が続ける。 

「気持ちは分かるけど、お寺さんに相談しないと・・・」ご両親が戸惑っていると、 
やり取りを聞いていた住職が「ご家族がお許しになれば、いいでしょう」と許可してくれた。 

俺らは葬儀のあと、泣きながらさくらの一部を、満開の桜の木の下に埋めた。