608 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/03/05(金) 04:28:12 ID:xfptnP3/0 [1/10回(PC)]
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あれは俺が中学生の頃だったからもう15年も前の話だ。 
今夜はまた田舎での恐怖体験の話をしようと思う。 

俺の田舎には山がある。平野の真ん中にポツンと出来た山だ。 
大きさはまぁまぁで、そこは昔から様々な怪奇現象が起こる事 
で地元では有名なスポットだった。山頂には戦国時代の城跡や 
墓地があり、昼間は観光客等も来るが夜は誰も近づかない。 

俺が中学に上がった頃、例のご意見番の婆さんが倒れ、山の麓 
の病院に入院した。婆さんに身寄りは無い。以前は息子がいた 
そうだが、若い頃に病気で亡くなったそうだ。婆さんの事を煙 
たがってる村人もいたが、ウチは世話になったのでよく家族で 
見舞いに行った。 

見舞いに行くと婆さんは余程嬉しかったのか、皺くちゃな顔を 
丸くしてニッコリと笑って喜んだ。婆さんはかりん糖が好きな 
のだが総入れ歯なのでハンマーで砕いてあげては、よく食べさ 
せた。そんな状態が1年ほど続いたある日、事件は起こった。 

婆さんがいなくなった。元々、認知症のケがあったのだがこの 
頃にはだいぶ酷くなっていた。病院や村は大騒ぎで、みんなで 
手分けして捜索に当たった。ウチも俺と親父が参加した。病院 
の話では、恐らく山頂へ向かったのではないかという話だった。 

前にも脱走したことがあり、看護婦も手を焼いているという事 
だった。俺と親父は懐中電灯を片手に後を追った。

 

 
609 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/03/05(金) 04:30:33 ID:xfptnP3/0 [2/10回(PC)]
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時計を見ると午前零時だ。山の中なので、もちろん街灯などは 
無い。麓で親父は俺に2つのものをくれた。1つはお札。もう 
1つは赤い紙を鳥居の形に切ったもの20枚程だ。俺は何これ? 
と聞いたが、親父は真剣な顔をしてこう言った。 

「いいか、この山は鎧兜を身に付けた昔の亡霊が出よる。お札 
は首から下げて絶対になくすな。紙の鳥居は亡霊が現れたら四 
方に置き、いなくなるまでやり過ごすんだ」 

親父は小さい頃からこの山で遊んでいた。いわば庭みたいなも 
のだ。安全な所、危険な場所も熟知している。亡霊や物の怪に 
も何度も遭遇したという。もらった鳥居はいわば魔除けのよう 
なもので、親父が小さい頃にあの婆さんに教えてもらい使って 
いたと言う。 

俺はこんな夜中にこの山へ入るのは初めてだ。緊張しながらも 
親父についてゆく。時折、夜行性の鳥の鳴き声が聞こえると、 
ビクッとする。空は曇り月が隠れている。真の闇だ。俺は怖く 
てしょっちゅう後を振り返った。 

しばらくして親父が立ち止った。俺は何事かと思ったが、どう 
やら婆さんの手拭いが捨ててあったらしい。俺は何だ手拭いか 
と安心したが、親父は小さい声で「シーッ」と言うとしゃがむ 
ように合図した。 

シャン シャン シャン・・・



610 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/03/05(金) 04:32:34 ID:xfptnP3/0 [3/10回(PC)]
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遠くから鈴の音が聞こえてくる。俺は背筋がゾクゾクし何とも 
言えない嫌な感じがしてきた。親父は鳥居を出すように合図し 
たので、二人を囲むように鳥居を置いて息を潜めた。と、何か 
が揺らめいて見えた。 

ボッ ボッ ボッ 

鬼火だ。鈴の音の方向に見える。きっと親父の言っていた亡霊 
に違いない。時折、鎧がきしむ音や槍がカチャカチャする音ま 
で聞こえてくる。恐ろしいのは地面を這うように聞こえてくる 
声とも叫びともわからない響きだ。 

う"お"お"お"お"ぉ"ぉ"・・・ 

俺は怖くなり震えていた。明らかにこの世に怨恨を残して死ん 
でいった魂達だ。俺達の30mくらい先を、麓から山頂に向けて 
行軍していた。どれくらい時が経っただろう、親父が「もうい 
いぞ」と言うので目を開けた。やつらはいなくなっていた。鳥 
居は真っ黒になり焼け焦げていた。 

俺たちは先へと進んだ。 

しばらく登ると少し開けた場所に出た。古い石碑があったので、 
懐中電灯で照らすと「首切り塚」と書いてある。自殺の名所だ。 
俺の友達のお兄さんもここで亡くなった。昔ここで罪人の首を 
斬って崖下へ投げ落としたのが名前の由来らしい。途端にゾク 
ゾクしてきた。