462 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:43:44 ID:2Yx6JI//O [1/4回(携帯)]
10/13 
よく見るとファンヒーターのケーブルに傷がつけられガスが漏れ出し 
ていた。すでに充満している。ここにいたらヤバイ・・・と、またあの 
音がした。 

カチッ カチッ 

誰かがあのライターで火を点けようとしている。俺は咄嗟に階段から 
転げ落ちた。ボンッ! 凄い勢いで炎が2階を埋め尽くすのが見えた。 
と、同時に1階へ落ちた。 

ブツン 

うぎゃ!? 右耳が取れた。。。階段に置いてあったピアノ線がなぜ 
か両柱に縛られ張られていた。俺の体はすでに痙攣をし始めていた。 
心が負ければその時点で死んでしまう。すでに家の半分以上は炎に包 
まれていた。俺は最後の力を振り絞って自分の部屋まで這って行った。 

ジリジリと炎に焦がされながらも部屋の中へ入った俺は見た。 

部屋の天井からさっき置いたロープが垂れていた。まるでここに首を 
入れろと言わんばかりに。そしてゴミ箱の中で何かが蠢いている。俺 
は無視して窓へ向かった。すりガラスだが薄っすらと外が見える。気 
が付くとさっきの人形が窓枠に立ってこっちを見ている。 

どうしても俺を外に出さない気か・・・ 

 
463 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:45:44 ID:2Yx6JI//O [2/4回(携帯)]
11/13 
途端に後方へ弾き飛ばされた。箪笥にぶち当たると俺は、急激に全身 
から血の気が引いていくのがわかった。意識がもうろうとしてきた。 
もうダメかも知れない・・・と思ったその時、ヒラヒラとリストが目の前に 
落ちてきた。薄れゆく意識の中で俺はリストの最後のアイテムを見た。 


鯉のぼり 


俺は ハッ!となり、全てを思い出した。 
その瞬間、押入れから神々しい光が溢れ出し、もの凄い勢いで炎やア 
イテム、俺を襲った人形達を飲み込んでいった。そして聞いた。人形 
の断末魔のような声を。。。 

う"お”お”お”お”ぉ”ぉ”・・・ 



しばらくして目が覚めた。 

俺は自分の部屋のベッドに寝ていた。起き上がり手足を見たが何とも 
ない。耳も両方付いている。時計を見ると朝の7時だった。お袋が 
朝食の用意をしている。俺はキッチンのテーブルに腰掛けるとカレン 
ダーを見た。5月5日だった。 

「どうしたの?学校休みなのに。もっと寝ててもいいのよ」 
「うん・・・」 



464 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:47:44 ID:2Yx6JI//O [3/4回(携帯)]
12/13 
お袋はそそくさと俺の前に朝ごはんを並べると、不振そうに俺の顔を 
見た。俺はしばらく黙っていたが、さっきの夢の事、そして子供の頃、 
買ってもらった五月人形について話し始めた。 

俺は小さい頃、2つの五月人形を買ってもらった。1つは金太郎で、 
もう1つは源義経だった。俺は金太郎人形が大きくて好きだったんだ 
が、義経のほうは地味であまり好きではなかった。毎年5月になると 
この2つを出してもらい、部屋に飾った。 

ある日、俺はおもちゃの代わりに義経で遊んでみようと思いガラスの 
ケースから取り出し、友達の怪獣の人形と戦わせたりした。遊びは次 
第にエスカレートし川に流したり、ヒモでつないでぐるぐる回したり 
した。そして事もあろうか、爆竹で・・・ 

すっかり変わり果てた姿になった義経に俺は怖くなり、そのままケー 
スにしまうと押入れの奥へと閉まってしまったのだった。確かその時、 
母親には邪魔だからしまった、と言った気がする。俺も翌年から丁度 
中学生だったので、2体の人形はそのまま出さなくなったのだ。 

お袋は黙って聞いていたが、やがてこんなことを言った。 

「そっか・・・きっと義経クンは寂しかったんだね」 

俺とお袋は朝食を済ますと、押入れから2体の人形を出した。じつに 
数年ぶりだ。金太郎のほうは変わらないが、義経のほうは思ってた以 
上に変わり果てていた。俺は痛んでいる箇所をプラカラーとパテで補 
修し、鎧はお袋が1日かけてミシンできれいに直してくれた。足りな 
いパーツは山のように積んであるガンプラから流用した。 



465 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2010/03/03(水) 19:50:12 ID:2Yx6JI//O [4/4回(携帯)]
13/13 
翌日、以前にも増して勇ましくなった義経人形が出来上がった。 

俺は義経に向かって正座し、以前してしまったひどい行為を心から詫 
び、これからは大切にすることを誓った。そして人形は5月いっぱい、 
部屋に飾っておいた。 

今考えるときっとあの夢は、小さい頃から守ってくれた恩も忘れ、痛 
んだまま暗闇にしまわれている人形からの「気づかせ」と「戒め」だった 
のだと思う。それ以降、俺はあの夢は見ていない。 

しかし当時は気が付かなかったのだが、今これを書いていておかしな 
点に気が付いてしまった。門の外にいたあの老婆だ。あの夢の結界は 
俺の自宅の敷地内だった。しかしあの老婆は完全に門の外、つまり敷 
地外および結界外にいたのだ。あれ以来、その老婆には出会っていな 
いが、気が付いてしまった今、俺は何か不吉な予感がしている・・・ 

おしまい。