519 : 踏切の男の子1[sage] 投稿日:2009/11/27(金) 18:17:38 ID:1PQ72wRu0 [1/3回(PC)]
もう二十年以上前の話。僕には霊感が強くてその手のものが見えるというTという友人がいた。 
基本的にはいい奴なのだが、見たくもないものが見えてしまうのはストレスにもなるらしく、 
オカルト的なものに関してはかなり捻くれたところのある奴だった。怪談話で盛り上がってい 
る友人達を冷笑しながら「すぐ側に何がいるのかも知らないで」と呟いたり。でも、個人的に 
彼に助けてもらったと思う体験もしているので、僕との仲は悪くなかった。これは高二の秋の 
頃、Tがしてくれた話。 

「Mが踏切で幽霊に会った話、知ってるか?K駅の手前の踏切あるだろ。そこに小学生くらい 
の男の子の霊が出るらしいんだ」 
Mは友人の一人で生徒会の書記をしてた。ある日生徒会帰りで遅くなり、自宅近くの踏切で幽 
霊を見たのだという。その踏切は昔から事故がよくあったようで「事故多発地帯」の看板も設 
置されていたが近くには商店街もあり、日暮れでも人通りもあって暗いという感じではなかっ 
たそうだ。だから踏切の中に立っている男の子を見ても、最初は「危ないな」と思うくらいで 
特に変な感じはしなかったのだという。 
「Mは気のいい奴だからな、もう暗いし踏切で遊ぶと危ないから注意してやろうと思いながら 
近づいてったらしいんだ。そしたら、お兄ちゃん、遊ぼって声を掛けられた気がして、何言っ 
てんだ、そんなところにいたら危ないぞって声を掛けようとしたら警報機が鳴り出して遮断機 
が下りてきた。でも男の子は踏切の中に立ったまま。そこで初めておかしいと気づいたんだな。 
この子は生きている人間じゃないと。ところが、自分では止まろうとしてるのに足が勝手に動 
いて踏切に近づいていく。まるで引き寄せられるようにね。遮断機のバーに体が当たっても更 
に前に出ようとする。焦って本当にヤバいと思ったようだよ。通りすがりのサラリーマンが肩 
を叩いて声を掛けてくれて、そうしたら急に力が抜けてその場に座り込んで、おかげで助かっ 
たと言ってた。座り込んだまま列車が通過するのを見てたらその瞬間男の子の姿は消えてしま 
ったそうだ」 


520 : 踏切の男の子2[sage] 投稿日:2009/11/27(金) 18:20:06 ID:1PQ72wRu0 [2/3回(PC)]
その日は危うく命拾いしたものの、踏切は登下校の度に通らざるを得ない。もうこんな怖い目 
には遭いたくないというので、Mが霊感の強いTに相談しに来たというのだ。 
「で、昨日行ってみたんだよ、その踏切に。そしたら確かにいるんだな、小学生低学年くらい 
の男の子が。なぜこんなところにいるのか、聞いてみたが答えない。死んだ人間はこんな所に 
いちゃいけない、って言うと、死んでなんかいない、と答える。子供の霊だと自分が死んでる 
ことがよく分からないでいることがあるからな、じゃあはっきりさせよう。お前の家にこれか 
ら行って確かめてみようと言った。多分一人ではこの場所から動けないだろうけど、俺と一緒 
なら動ける。お前の家まで道案内しろ。で、一緒に歩き出したんだ。この子は勿論この踏切で 
死んだんだろうけど、このくらいの年齢の子なら自宅もそれほど離れてないだろうと見当をつ 
けたんでね。実際、十五分ほど歩いて静かな住宅街の一戸建ての家に案内された。変な奴だと 
思われるだろうが後には引けない、チャイムを押して中から人が出てくるのを待った」 
しばらくして母親らしき人が出てきて、勿論不審な表情をされたが、Tは自分の名前と高校名 
を言い、駅前の踏切でこれくらいの背格好の男の子を見た、その子はこの家の子だと言ってい 
る、ついては迷って成仏できずにいるこの子のためにお仏壇を拝ませてもらえないかという話 
をした。母親は淡々と話を聞いていたが、結局中に入ることを許してくれた。 
「母親は半信半疑だったと思うよ。子供の方は母親を見た瞬間から胸がいっぱいで何も言えな 
いといった様子だった。仏壇に手を合わせて、これで自分が死んだって分かったかと聞くと、 
分かったと言う。せっかくお母さんに会えたんだ、何か言うことは無いのかって聞いたら、し 
ばらく黙っていたが、こう伝えて欲しいと言う。そこへ母親がお茶を持ってきてくれて、あの 
子は今そこにいるんですか、と聞かれた。いえ、今ちょうど仏壇の中に消えていきました。最 
後にこう言ってました、おかあさん、うそついてごめんなさい。そしたらそれまでずっと無表 
情だった母親が声もなく泣き出してね」 



521 : 踏切の男の子3[sage] 投稿日:2009/11/27(金) 18:21:14 ID:1PQ72wRu0 [3/3回(PC)]
男の子が踏切事故に遭った日、母親は学校のテストのことか何かでうそをついた男の子を叱っ 
たのだという。あんなに叱らなければ、家を飛び出して事故になど遭わなかった、それどころ 
かあれは自殺だったのではないか、母親は自分を責め続けていたのだろう。その子供が帰って 
きてくれて、恨み言一つ言わず「うそついてごめんなさい」と素直に謝って、母親の心を少し 
だけ軽くしてくれた。 

「まぁ、あの踏切に男の子の幽霊はもう現れないと思うよ。そう話したらMも安心してた」 
話を聞いてた僕は、少々引っかかるところがあって口を挟んだ。 
「男の子が成仏できてお母さんも嬉し泣きで、いい話だけど、Mはその男の子に殺されかけた 
んだよね。あそこは事故が多いから、ひょっとしたらその子のせいで怪我したり、死んだりし 
てる人がいるかも知れないんだよね。そう考えると素直にいい話だと思えないんだけど」 
「ああ、そのことね。Mを踏切に引きずり込もうとしたのはあの子じゃないと思うよ。あの踏 
切は何十年も前から事故が多発してて、ヤバい感じのが他にも複数いるんだ。あの子は単に遊 
び相手が欲しかっただけで、それをそのヤバい奴らが利用しただけだと思う。だから、あの踏 
切が依然として危険なことには変わりがないんだ。お前も通るときは気をつけた方がいいぜ」 
そのことはMには伝えていないんだろう。Tはこんな風に捻くれた奴なのだ。