167 : 1/3[sage] 投稿日:2009/10/22(木) 22:17:57 ID:JRpioPO30 [1/3回(PC)]

この部屋に引っ越してきた時のこと。 

引越魔な友人Aに手伝ってもらい、荷解きも片付けもその日中に済んだのだけど 
日が暮れてしまったので、Aはその日、部屋に泊まっていくことになった。 
たわいない話をダラダラと喋っていて、気がつくともう日付が変わっていた。 
そろそろ寝よう、でもその前にシャワー浴びたい。と言って、Aが浴室の明かりをつける。 
その瞬間、浴室の窓に何かがぶつかるようなバォンッ!という音が聞こえた。 

部屋はアパートの5階、窓は公園内にある小さな林に面していて鳥も多い。 
でもこんな時間に鳥は飛ばないよな… 
不思議に思いながらAを見る。Aも訝しげにこちらを見ながら、後手に浴室のドアを開ける。 

Aの肩越に、細く開いたドアの隙間から、浴室の窓がスーッ…と開くのが見えてしまった。 

怖いというより、は?何?と状況把握できず、私はにポカーンと固まる。 

気付くと、部屋の雰囲気がなんだか異常なことになっていた。 
妙に生暖かい気配が部屋中を歩き回っている。 
ドアがガタつき、カーテンが軽い音をたてて揺れる。 
固まって動けない私の足元にある、お菓子の袋が横に滑る。 
同時に、濃い気配と鼻息のような音が横切っていく。

 
168 : 2/3[sage] 投稿日:2009/10/22(木) 22:18:51 ID:JRpioPO30 [2/3回(PC)]

さらに、Aの様子までおかしくなっていた。 
表情が消えている。 
どこかを見ているという感じもなく、放心している様子でもなく 
考え込むような表情のまま、浴室のドアに手をかけたまま動かない。 

気配はゆっくりと、床をギィ…ギィ…と鳴らしながら移動してゆく。 
Aは視線すら動かさず、ゆっくりと大きな深呼吸を繰り返しながら立ち尽くしている。 
気配も怖いがAも怖い。聞こえるはずの時計の秒針の音も、全く耳に入ってこない。 

それでも、時間にすれば数分の事だったと思う。 
これは風の仕業だ、それと引越疲れで過敏になってるんだと 
必死に自身に言い聞かせているうちに、突然、気配はなくなった。 

同時にAも元に戻った。 
「疲れた?シャワーいいやもう寝る」 
それだけ言ってベッド(私のだ)にもぐりこもうとする。 
説明してと引き止めても、明日起きたら話すの一点張り。 
寝床は取られるはとにかく怖いわ、一人で居たくなかったので 
書置きを残して近くの24時間営業のマックに避難し、ひたすらコーヒー飲みながら朝まで過ごした。



169 : 3/3[sage] 投稿日:2009/10/22(木) 22:19:40 ID:JRpioPO30 [3/3回(PC)]
翌朝。部屋のあまりの静けさに、最悪の想像をしながら恐る恐る寝室を覗いてみる。 
幸いにも、Aは気持ちよさそうに爆睡していた。 
昼ごろやっと起きてくると昨夜の仔となんかなかったかのように躊躇なくシャワーを浴び 
テイクアウトしてきたマフィンをぱくつきながら昨夜のことを説明してくれた。 

曰く、A自身も別段『見える人』ではないらしい。 
しかし先述のように引越魔なので、時には厄介なルームメイト付き物件を引いてしまうこともある。 
妙な気配を感じると、Aはとにかく強気にでるようにしているらしい。 

「ここはね、賃貸アパートなの。家賃払ってる人が住む所なの。あんた家賃払える? 
無理でしょう?だから出てって。この部屋の主は私、誰を招くかは私が決めるの。 
あんたは招かれざる客、わかる?ほら、さっさと出てって、つか出てけやゴルァ!!!」 
こんな'交渉’を何回か続ければ、大概のところは穏便に住めるようになる、らしい。 

霊感0、霊体験皆無の私には、これがなんらかの霊の仕業なのかは分からない。 
その時以来、何もおこっていないし、今となってはあれは気のせいだったという思いが強い。 

でも、Aは'交渉’中「お前は林に住んでればいいんだよ!」と念じた、と言っていた。 
そのため、未だに浴室の窓を開けることだけはどうしてもできない。