269 : 幽霊ではない1/2 ◆BxZntdZHxQ [sage] 投稿日:2009/09/27(日) 01:01:49 ID:95iGUUHW0 [4/13回(PC)]
恥ずかしながら、俺は今でも実家住まいだ。 
忙しい時はひと月丸々家に戻らないなどざらで、 
逆に暇な時は何週間も家にいて、夜昼なく自分の作品を描いていたりする。 
家が都心への通勤圏なのもあり、どうしてもこの方が便がいい。 
その代わり女っ気はあまりない訳だが、それについては放っておいてくれ。 

そんな俺だから、ひとつ、全く経験のないことがある。 
家探しだ。 
仲間内で話していると、よく話題にあがる事柄である。 
これは、松岡から聞いた話だ。 

「京都のツレが、前にそんな家に住んでたよ。」 
一緒にテレビを見ながら、ヤツはそう言った。 
その時画面には心霊現象を頭ごなしに否定する学者が映っていた。 
こういう人はとりあえず、妻子と一緒に曰く付きの物件に三ヶ月くらい住んでみて 
ほしいものだと俺が言うと、松岡は楽しそうに口角を上げて見せたのだ。 
それは何、本人が否定派?家族は一緒なの?家族が一緒なことが大事なんだよ、 
否定してる本人より家族が見たり感じた時にどう説得するのかそこまで込みで、 
…喜々として腰を浮かせる俺に、「いやいや、ひとり」と手を振る。 
「ナオさんと同じようなこと言って、わざわざそんな所に引っ越したんだよ。 
 違うのはナオさんがアレを受け入れていて、そいつは受け入れていないこと。」 
うけいれる、俺は口の中で松岡の言葉を繰り返した。 
信じているのとは違う。何か、そんなこともあるよな~と思う受動的な感覚。 
俺のそんなうすぼんやりした状態を指しているのだと思う。 
「その結果、一週間もしないうちにそいつは色んなものを見た。」 
松岡はにやにやしながら続けた。 
怪音から金縛り、人の気配に始まって、最終的には廊下を歩く人影まで。 
零感で心霊現象否定派の筈が、数日のうちにベタな現象に次々遭遇したらしい。

 
270 : 幽霊ではない2/2 ◆BxZntdZHxQ [sage] 投稿日:2009/09/27(日) 01:06:05 ID:95iGUUHW0 [5/13回(PC)]
「で、結局ひと月くらいで慣れた。」 
「……慣れた!?」 
何か声が裏返った。松岡はけらけらと笑ってまた手を振る。 
「幽霊なんて非科学的だ、測定も出来なければ、 
 万人が知覚出来ないものはないのと同じだって言ってたんだけどね。 
 そいつは見て聴いて触れて、自分で確認しちゃったんだ。 
 それで、こう言った。」 

『霊感なんかないし信じてもいない俺が見えるんだ、これは実在するものだ。 
 幽霊なんて便宜上のレッテルを貼ってとりあえず未整理フォルダに突っ込んだだけで、 
 もっと感度のいい測定機材とかが出てくれば絶対証明される何かの現象だ、 
 だから幽霊はいない。』 

「らしいよ。」 
俺は開いた口が塞がらなかった。 

彼は結局契約満了までの2年間、 
その家で『幽霊じゃない何かの現象』と同居したそうだ。 

やっぱり、受け入れていない人は彼のやったことを試してみてほしい。 
俺は絶対にイヤだ。