38 : 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ [sage] 投稿日:2009/07/19(日) 20:28:24 ID:vOrrc8SA0 [3/4回(PC)]

知り合いの話。 

彼の親戚に、拝み屋の真似事をしていたお爺さんがいたらしい。 
困ったことが起こると呼ばれて、的確な助言をしてこれを助けていたのだと。 

当事者ですら知らない事を明らかにすることもあったそうで、近在では非常に有名な 
存在だったという。 
かなり離れた村からも、請われて足を運んでいたそうだ。 

お爺さんのやり方は独特で、手にした竹筒に問題事を詳しく説明することから始まる。
 
しばらくするとその筒を耳に当て、誰かと相談でもしているかのように相槌を打ち、 
やおら解決方法を説明するといった具合だった。 


「その竹筒がすべて答えを教えてくれるのかい?」 


そう誰かに尋ねられた折、次のように返したらしい。 


「タケイヅナといってな、稀に竹の節の中に小さな獣が生まれることがある。 
 それの入った節ごと切り出してな、酒や米をやって世話をしていると、人のために 
 働いてくれるようになるんだ。こいつがそれよ」 


竹筒をポンと叩き、呵々と笑う。 


「外に抜けるのは自由自在、人の目に写らぬほどはしっこい。 
 物事の通りを教えときさえすりゃあ、失せ物揉め事たちどころに解決って訳だ」 


お爺さんが亡くなった折、この竹筒を貰い受けた親族は、何を思ったか鉈でスッパリ 
半分に割ってしまったらしい。 

居合わせた者の話では、中には何も入っていなかったといわれている。 
ただ、獣臭が混じった酒の香りが、色濃く立ち上っていたそうだ。