891 : 元彼3/6[sage] 投稿日:2009/07/21(火) 12:19:06 ID:ZfBhv75q0 [3/7回(PC)]

もう大丈夫と思い彼女にメールするつもりで携帯を手にした。 


”ギシギシ ギシギシ” 


窓の方からなにやら軋む音が聞こえる。 
俺はぞっとした。嘘だろ?ベランダに登ってくる気か! 

この部屋は二階なので、雨樋をつたえば簡単に登れる。 
とっさにテレビを消し、ベットの影に隠れた。 

その直後、タンという音と共にシルエットがカーテンに写る。 
シルエットはうろうろと動きまわり、 
カーテンの隙間から中を覗こうとしているようだった。 


”ドンドンドン いるんだろ?開けてくれよ” 


奴は小声で呼び掛けてきた。 
なんでいるって分かるんだ?ああ!エアコン入れっぱなし! 
ベランダでは室外機がブンブン回っているはずだった。 

何度も何度も窓を叩き呼びかけてきたが、 
一向に出てくる気配のない事に痺れを切らしたのか、 
ガタガタとサッシを持ち上げ始めた。 

それ位で外れるはずはないと思いつつも心臓はバクバクだった。 
いくらやっても開かないので諦め、 
ドンと窓を叩き、奴は再びギシギシと雨樋を下りていった。
 
892 : 元彼4/6[sage] 投稿日:2009/07/21(火) 12:21:20 ID:ZfBhv75q0 [4/7回(PC)]

つかの間静寂だった。 
ベランダまで登ってくる奴の事、これ位で帰るはずがない。 
そっと玄関へ行き、ドアスコープを覗いた。 

心臓が止まるかと思った。 

レンズには男の横顔がどアップで映っていたからだ。 
奴はドアに耳を当てて聞き耳を立てていた。 
微動だにできず、レンズから目を離すこともできなかった。 

奴はしばらく中の様子を伺った後、徐に屈み込んだ。 
パタンという音とともに郵便受けが開いた。 
やばい!いくら郵便受けに傘が付いているとはいえ、 
真正面は見えなくても下側は覗き見ることができる。 

気付かれないよう、見えるであろう片足を慎重に上げそっと壁に付いた。 

すると今度は郵便受けからグググとごつい手が出てきた。 
どこから持ってきたのか手には曲尺が握られている。 
そいつでどうするつもりだ?その手を凝視した。 

手は器用に動かされ、曲尺は鍵に向かって伸ばされた。 
その様子から目が放せなかった。 
曲尺は何度も鍵をかすめ、ペチペチと音を立てた。