859 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2009/06/06(土) 07:50:18 ID:JvN5udSu0 [1/3回(PC)]

幽霊や妖怪といったオカルトの類はまるっきり信じていない俺だが、 
一度だけ不思議なことに会ったので記しておく。 
長文で失礼。 

あれは5年前。 
7月下旬の週末だった。 

当時の俺は富士登山に凝っていて、しかも体力の限界まで試すのが好きだった。 
その時は2回目の富士登山だった。 

その前の年、初めての富士山で吉田口を0合目浅間神社から往復することに成功した俺は、 
2回目は御殿場口から登ろうと思っていた。 
そしてやるなら今回も浅間神社からにしようと。 

御殿場口の場合は御殿場駅前にある浅間神社からスタートだ。 
新宿発の高速バスに乗って、駅前に到着したのは深夜だった。 
浅間神社でお参りし、旅の無事を祈った。 

ここから富士山山頂まではざっと20km弱ほどの距離があった。 
もちろん徒歩で往復するつもりだった。 

富士山方向へ小1時間程度だろうか、しばらく歩くと米軍基地前を通り過ぎた。 

そこから先は、街のあかりもなく、静かな闇の中を歩くことになった。 
どこまでも真っ直ぐな道だったが、時々車が通り過ぎることがあった。 

田舎道なのでみんな結構スピードを出して飛ばしている。 
脇を歩く俺は引かれやしないかと危険を感じながら歩いていた。 
やがて、ヘアピンカーブの続く道になった。 

ここまで来ると道も傾斜がつき始め、徹夜でぶっ通しで歩いている俺には少々きつくなっていた。 
だが、先に書いたとおり、時々通る車に危険を感じていたので、なるたけ早く御殿場口5合目まで 
行こうと道を急いでいた。 
周りは闇の中で、こんな中で休みたいという気持ちにもなれなかった。 
そして、御殿場口への分岐点についた。 

そこにはトンネルがあり、また案内用の大きな看板もあった。
 
860 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2009/06/06(土) 07:51:06 ID:JvN5udSu0 [2/3回(PC)]

分岐点には街灯が灯され、闇につつまれた道をひたすら登ってきた俺にはオアシスのように感じられた。 
看板前にコンクリートのバリケード(冬は車が入り込まないように御殿場口登山道への道を封鎖している。 


このときは開いていたので脇に置かれていた)に腰を下ろし、しばし休憩を取ることにした。 


周りは闇に囲まれ、静かだった。 
さっきまでは時々見かけた車もしばらく見ていない。 
静かな夜だった。 


その時だった。 
「プーン。」 
後ろから音がはっきり聞こえた。 


蜂の羽音のような音だ。 
しかも大きい。 
スズメバチか? 
反射的にひやっとしてその場から飛びのいた。 

そして音の鳴る方向を凝視した。 
そこには案内用の看板があるだけだった。



861 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2009/06/06(土) 07:51:47 ID:JvN5udSu0 [3/3回(PC)]

考えてみればおかしな話だった。 
こんな真夜中にスズメバチが飛んでいる? 

でもそこは街灯に照らされた明るいスポットだったので、蜂が起きていても不思議ではないか? 
しかし、音はすれども蜂の姿はなかった。 
しばらくじっと見ていた。 
その時だった。 


コンクリバリケードの裏から、誰かが頭を持ち上げた。 


人間だ。 


こんなところに浮浪者でもいるのだろうか? 
いや、本当に人間か? 

目を凝らしてよく見た。 
そこは明るかったのでよく見えた。 
干物のように乾いた人間のミイラだった。 

それが頭を持ち上げこちらの様子を伺っていた。 
そしてまたコンクリバリケードの陰に消えた。 

俺は一目散に逃げた。 
御殿場口5合目駐車場まで走って逃げた。 

今でもあれは何だったかよくわからない。