460 : 1/3[sage] 投稿日:2009/02/17(火) 05:41:12 ID:qLAL3muH0 [1/3回(PC)]
俺が生涯、一番オカルト方面で待遇が良かったと思う、学生時代の話。 
脚色も入っているが、そこはご勘弁を。 

全く、大学ってのは広い所だ。 
入学してから暫く立っても、毎日素敵な出会いがあった(男女問わず)。 
その度に親睦会めいた飲み会をやった物だ。 
今考えると、よく飽きずにそんな事をやっていた物だと我ながらに飽きれるw 

ある時、大学から比較的近くにアパートを借りて、よく人を呼んで飲んでた人の部屋で、何人か集まって飲み会をやる事になった。 
地方から出て来ての初めての一人暮らしだったから、寂しかったんだろうね。 
この人は歳の割に顔を行動も老けてたので、オヤジ呼ばりされる事が多かった。なので、ここではオヤジとしますw 

このオヤジのアパートは、雰囲気があるというか、とにかく古くてボロいんだわw 
木造1k。擦りガラスの障子みたいな扉が台所と畳の部屋の間にある、よくある○○荘って感じの造り。 

まぁ年頃の連中が集まる訳だから、当然恋バナに花が咲いたりする訳だが、大勢いるとやっぱり怪談話が盛り上がってしまう訳ですよw 

輪になる形で、体験談・聞いた話を順番にしてたと思う。 
この場でリーダー的な存在になってた人が、また霊感持ちだった。 
その時は大分落ち着いてたけど、地元じゃ相当DQNで、以前は族だったらしい。 
ちょっとダウンタウンの浜ちゃん風w(元DQN系の人で見えるって人多いよねw) 

で、この人は非常に話が上手いんだわ。 
聞いた事のある系統の心霊話でも、その魅力?を120%以上引き出した形で話してくれるんだ。 
皆自分が話すより、浜ちゃんの話を聞いてる方が面白かったんだろうね、終いにはずっと彼の独壇場になってしまった。 
そんな中、よく聞く系統の話もネタが尽きてしまったのか、体験談が始まったんだよ。

 
461 : 2/3[sage] 投稿日:2009/02/17(火) 05:42:05 ID:qLAL3muH0 [2/3回(PC)]
体験談てさ、オチも付きにくいし、ショートショート並みに話が短かったりするじゃない? 
この人の話も多分に漏れず、それに当てはまるんだが、話し方が上手いから迫力があるんだ。 

何で体験談を後に持ってくるんだろう、こっちの方が怖いのに…と疑問を持った時だったかな。 
空気が違うのに(やっと?)気付いたんだ。 
何かね、空気が冷たいんだよ。ピリピリする感じ。 
「あれれ、ちょっとヤバくないか?」と思った矢先に、一人の女の子が頭痛を訴えて来た。 
この空気が彼女に頭痛を齎したのか、ただ単に酒が合わなかったのかその時は分からなかった。 
終電も無い時間なので帰す訳にも行かず、オヤジが毛布を出してきて強制的に横にさせる事にした。 

酒が入っている上に、乗りに乗っていた浜ちゃんの体験談はここで途切れなかったんだ。 
むしろさっきより話に拍車が…って時に突然彼が悲鳴を上げた。 

「うわあああぁぁぁああ!!!!!!」 

とほぼ同時に 

『バシャーーーン!!!!!!!!!』 

擦りガラスの襖から物凄い音がした。 

「手が、手が!!!」 

浜ちゃんが言うに、人間の顔位の大きさの白い「手」が、擦りガラスをぶっ叩いたらしい。 
衝撃の余韻でビリビリビリ…とガラスが揺れている中、必死にその「手」の持ち主に謝り続ける浜ちゃん。 
彼はその時、相当パニクってたと思う。 
俺は残念ながら(?)最初の叫び声にビビってしまって、その「手」は見逃してしまった。 

外に逃げるには、擦りガラスの襖を開けなくちゃならないのでどうしようもなく、 
皆落ち着くまでヒソヒソと楽しくなる様な話を無理矢理していた。


 
462 : 3/3[sage] 投稿日:2009/02/17(火) 05:56:57 ID:qLAL3muH0 [3/3回(PC)]
「さっきは凄かったねー」 
「俺マジでビビっちゃったよ」 
「やっぱああいう話してると来るんだね」 
「いきなりだもんな~」 
などと先程の出来事をビビりながらも笑いながら話せる様になった頃、 
頭痛で横になっていた女の子がムクリと起きて開口一発。 

「あの人最初からあそこにいたよ」 

この件を堺に、部屋主であるオヤジの特権により、この部屋での心霊話は禁止となってしまった。 


後日、その飲み会には出席しなかった、 
俺の中では(今でも)最強の霊感持ちで、俺やオヤジと同じクラスの、 
鳥山明の漫画に出てきそうな顔をしている友達にその事を話した。 

が、特別驚く表情も見せず、笑いながら 
「大変だったね~」と。 

あの日の恐怖などすっかり忘れ、 
「こいつなら他にも色々見えるんじゃないか」 
という、心霊現象への好奇心だけでいっぱいの俺がオヤジの部屋へ誘っても彼は動じず、 

「あそこにはもう二度と行かないよ」 

意味深な笑みで返され、事実、卒業までその部屋でこの友人と会う事は無かった。