845 : 1/2[sage] 投稿日:2007/01/22(月) 04:15:16 ID:sKEoFK+k0 [1/2回(PC)]
オジサンは単独行動が好きらしく、その日も1人で山に入った 
仕事が終わってから出発したので、既に日が暮れかけていた 
何度も登った山だったので、大丈夫だろ、と思っていたそうだ 
オジサン曰く、「まだ若かったからなあ」とかなんとか 

すぐに日が落ちて、あたりは真っ暗になってしまった 
オジサンは潔く諦めてテントを張って、寝る事にした 
普段だったら、もっともっと!と進んでいただろう、とオジサンは言っていた 
その日は何故か、「ここでいいや」と思ったそうだ 
1人でテントの中、コーヒーを入れていると人の話し声がする 
オジサンは「他にも誰か居るんだな」と思いながら、 
寝袋の中で地図を眺め、コーヒー飲みつつ明日の計画を立てていた 
その内、眠くなって寝てしまった 

朝、テントから出ると、テントを張った場所のすぐ後ろは崖になっていた 
日が暮れていたから見えなかった様だ 
オジサンはゾッとしたが、「まぁ無事だったしいいか」と思った 

テントを畳んで、ザックを担いでから何気なく崖下を覗いてみた 
本当に何気なく、何故か覗いてしまったらしい 
すると、もさもさ茂った木の間に、真新しい帽子が落ちているのが見えた 
「まさか?」オジサンは誰かが滑落したのか?と身を乗り出した 
すると、耳元で「危ないよ」と言う声が聞こえたそうだ


846 : 2/2[sage] 投稿日:2007/01/22(月) 04:17:19 ID:sKEoFK+k0 [2/2回(PC)]
オジサンはびっくりして、振り返ったが誰も居ない 
今度はザックをおろし、ザイルでその辺の木と身体を繋げてから覗いてみた 
だけど帽子以外の物は見えなかった 
オジサンは帽子を拾う為に崖を少し降りた 
周囲を見ても、やっぱり帽子以外の物は見つからなかった 

オジサンは予定を変更して近くの山小屋へ向かった 
何となく、帽子が気になったので持って行く事にしたんだそうだ 
山小屋に着くと何か騒がしい 
話を聞くと、どうやら昨日(だったと思うんだがうろ覚え) 
崖から落ちて亡くなった人が居るらしい 
オジサンは帽子を差し出し「もしかして、その場所は・・・」と 
昨日自分の泊まった場所を伝えた 

亡くなった人は、オジサンの泊まっていた場所よりもっともっと下まで 
落ちてしまっていたそうで、既に遺体は回収されていた 
一緒に登っていた人は「あの人の帽子です。見つけてくれてありがとう」 
と言って泣き出した 
オジサンは困惑して、さっさとその場を後にすると 
当初の予定通り単独で頂上まで行って、家に帰って寝たそうだ 

で。子供だった自分は深い意味も無く「なんで崖を覗いたの?」と聞いた 
オジサンは「さぁ?なんとなくだよ」と言った 
「じゃあ危ないよって言ったのは誰?」「多分、亡くなった人じゃないか?」 
「なんで?」「見つけて欲しかったんじゃないかな?帽子を」 
そんな風に言われて、何となく納得は行かなかったけど、黙った 
最後に「夜中に聞こえた声って何だったの?」と聞いたら 
オジサンはやっぱりニヒルに笑って「見つからないー見つからないーって。 
何か探してる声だったぞ」と言ったので、ゾッとしたのを覚えてる 

この話自体は子供心に怖かったけど、 
このオジサンはきっといい人なんだ、と思ったりした