106 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2007/07/30(月) 20:37:14 ID:+NEg9ToD0 [1/3回(PC)]
ある日会社の駐車場で猫に出会った。 
すぐ寄って来てすりすりするのでもとは飼い猫だったようだけど、ひどく痩せている。 
社員の夜食の魚の缶を開けてやったら、がつがつ食べた。 
翌日遊びに来て2~3日おき、1日おきとなり、とうとう居ついてしまった。 
10年前の事である。  すでに自宅には捨て猫捨て犬を何匹も飼っていたので会社で 
飼うしかない。 
全く人見知りしない猫で、猫が好きでない社員でさえ可愛がり、どんどん太って7.5 
キロにもなった。 
数年後、社員の一人が離婚し、会社のすぐ近くのアパートに越してきた。 
いつも夜ひとりぼっちだった猫は、毎晩その社員の部屋に訪ねて行くようになり、朝は 
一緒に出勤してくる。 
そんなある日、月曜日に猫の皿にえさがてんこもりのままになっている。続く


107 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2007/07/30(月) 20:46:24 ID:+NEg9ToD0 [2/3回(PC)]
土曜日に最後に退社する社員が餌を沢山盛って行ったのだ。 
姿を見ないし、どうしたんだろう?と心配していた。 
その社員の顔を見て驚いた。 
顔にひどい傷が付いている。 
聞いてみると、土曜日の夜、友人と酒を飲んでタクシーを降り、県道を渡ろうとしたところ 
脚がもつれて顔から倒れ、脳震盪を起こしてそのまま意識を失った時についた 
傷だったそうだ。 
かなり車の通行量も多い道である。 
人に助けられ、気が付いた時には30分は経過していたそうだ。 
よく車に轢かれなかったものね、と奇跡にようだと思っていた。 
その日の午後、その社員が打ち合わせに行こうといつも使う車をバックさせたら、 
その下にすでに冷たくなっていた猫が居た。 
会社の前には何台もの車があったのに、多分車に轢かれた後その社員の車の下まで 
這って行って死んだのだろう。 
餌が減っていなかったので、土曜日に死んだに違いない。 
どう考えても社員の身代わりになったとしか思えない。 
3年前の事である。7年会社で暮らし、みなに安らぎと笑顔を与えてくれた。 
いつも優しくてゆったりのんびりした陽だまりのような子だった。 



108 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2007/07/30(月) 20:53:54 ID:+NEg9ToD0 [3/3回(PC)]
寒い日も、会社に置いて行くのが気がかりだった私は、お互いに寂しさを暖めあって 
いた社員と猫をほのぼのとした目で眺めていたものだ。 
皆から可愛がられても、家庭の温かさを得られなかった猫は、夜、暖かな部屋に迎え 
てくれる社員に感謝していたのだろうと思う。