240 : N[sage] 投稿日:2007/01/03(水) 02:23:55 ID:zDs4lTJG0 [1/9回(PC)]
誰も居ないうちに、友人から聞いた話を投下します。 
読み物として面白い様に加工してあるけど、そこはご勘弁。 

心霊スポット巡りのサークルに所属する大学生の友人。 

その体験談。

 
241 : N-1[sage] 投稿日:2007/01/03(水) 02:27:12 ID:zDs4lTJG0 [2/9回(PC)]
>>240 
「俺に霊感は無い」というのが先輩の口癖だが、 
そんなことは決してない。彼は第六感の塊であると 
僕は確信している。誰も居ない場所をじっと見つめて 
いることはよくあるし、なんでもないような場所で突然 
ぶっ倒れたりするなんてことはザラだ。 
先輩がそんな風になる場所は、大抵いわくつきの所で 
あったりする。心霊スポットを訪ねるとしょっちゅう倒れる 
もんだから、僕も仲間たちもすっかり慣れてしまった。 
白目をむいて昏倒する先輩を介抱するのも、いつものことだし朝飯前だ。 

などと普段は思っているのだが、いざ倒れられると多少は動揺してしまう。 
今がまさにそのときである。 
先輩は顔を完全に土気色にして、仰向けに倒れていた。 
ビクンビクンと痙攣さえしている。 
先輩の様子がここまで酷くなるのも珍しいので、 
サークルの仲間たちもいささか驚いているようだ。 
1人が先輩の上半身を支えて、別の1人が用意しておいたペットボトルの水を 
彼の口に注いでやる。俺はと言うと、先輩から事前に頼まれていたように 
粗塩を周囲に振りまいている。こうすれば何故だか気分が良くなるそうな。 
周囲は完全に真っ暗。ここは二十数年前廃墟となった病院の中である。 
ところどころガラスが割れ、かび臭いようなホコリくさいような、 
独特の空気があたりを包んでいる。 
この手の廃屋は、僕たちのサークルでは下手したら週一のペースで 
訪れるので恐怖は薄い。しかし今は結構怖い。先輩はいつもなら 
スポットに入ってからしばらくして次第に青白い顔になってゆく。 
だが今回、外で車を降りた瞬間に一気に青ざめたのを見たときは、 
何となく嫌な予感がした。ここはひょっとしたら本当に危ないのかもしれない、と。 



242 : N-2[sage] 投稿日:2007/01/03(水) 02:29:08 ID:zDs4lTJG0 [3/9回(PC)]
>>241 
この廃病院に関して、詳しい情報はわからない。 
情報はといえば廃墟となった時期と、過去に数件犯罪の 
現場になっていたらしいということだけだ。 
僕らはいつもネットで訪問先を探す。 
心霊スポットを集めたサイトなどに行けば、かなりの情報量が 
あるものなのだ。 
大抵はそのときにいろいろ詳しいこともわかるのだが。 
尾ひれのついた噂話1つも見つからない。 
こんなことは初めてだった。 
だが、「いろいろわかんない方が、かえって面白いんじゃないの?」 
という先輩の一言で、それなら行ってみようかということになったのだ。 
確かに僕も、『何の情報も無い』という点においては 
興味を魅かれていたので、多少楽しみではあった。 

だが、この有様だ。いつもよりも先輩の症状が酷いということは、 
本格的に危険なのだろう。先輩には気の毒だが、 
もはや彼は炭鉱夫にとってのカナリアみたいな人だった。 
ここは一旦出た方がよさそうだ。 
僕は霊感などの類は全く持っていないが、先輩の状態は 
本当に心配すべきものであることはわかった。 
「とりあえず、先輩を外に連れてこうか」 
僕が提案すると仲間たちは「そうだな」「先輩がコレじゃなぁ」 
などと漏らしながら、よいっしょっと先輩を二人掛りで運び始めた。 
残りのメンバーも出口に向かって歩き始める。 
僕も全員が居ることを確認すると、みんなの後を歩いた。 
しばらく進んで僕はふと妙な違和感を感じたが、敢えてそれは無視した。 
今は先輩を外に連れ出さねば。 



243 : N-3[sage] 投稿日:2007/01/03(水) 02:30:47 ID:zDs4lTJG0 [4/9回(PC)]
>>242 
長い廊下を進み、暗い階段を降りて僕たちは病院を出た。 
外には車が停めてある。もう既に使われていない、 
病院の駐車場だ。車には、メンバーを1人待たせておいた。 
いや、メンバーというか、このサークルの創始者たる人だが。 
この人を、僕たちはN(仮)さんと呼んでいる。 
彼はすでに大学を卒業しており社会人で、休みがとれると 
こうして心霊スポット巡りに参加する。 
ちなみに今回は彼が車を出してくれた。 
訪問先を伝えたとき彼は一瞬眉をひそめた後すぐにニヤニヤと 
笑いだし、自分が足を提供しようと申し出たのだ。 
Nさんは基本的には面倒見のよい人でサークル内の兄貴分なのだが、 
ことオカルト的なことに関しては人が変わる。 
どのように変わるかと言うと、きちんと表現するのは難しい。 
なんというか、変態っぽい人格になる。 
オカルトな話題に輝いているときのNさんの眼は、ちょっと恐い。 
Nさんはこの廃病院を訪ねるに当たって、妙な条件づけをしてきた。 
「車は出してやるけど、俺は中には入らないよ。」 
Nさんが変なのはいつものことだが、オカルトが大好きで 
心霊スポットに眼がない彼がえらく消極的なことを言うので、 
僕は怪訝に思った。理由も聞いてみたが、Nさんはニヤニヤ笑いを 
浮かべるだけで答えらしい答えは返してくれなかった。 



244 : N-4[sage] 投稿日:2007/01/03(水) 02:33:05 ID:zDs4lTJG0 [5/9回(PC)]
>>243 
停めてある車まで近づくと、運転席のNさんがドアを開けて車から降りてきた。 
Nさんは俺たちを見るなり、いつものオカルト変態モードに切り替わったのか 
口元に変な笑いを浮かべている。 
大方、カナリア先輩の様子でも見て想像を膨らませているのだろうが。 
しかしいくらNさんも慣れているとはいえ、すこしはカナリア先輩を 
心配してあげても良いものではなかろうか。 
「ああ、今日はいつにも増して良い具合だな」 
Nさんは心なしかうっとりとした感じで、カナリア先輩を見て言う。 
この人は本当に頭大丈夫なんだろうか。 
とりあえず全員車に乗る。Nさんの車は6人乗りのワゴン車だ。 
一番後ろに先輩と介抱係を座らせる。 
「やべぇぞ。先輩、身体すげぇ冷たくなってる!」 
介抱係が慌てている。 
みんなも今回ばかりは「いつものことだから」と流すことはできない 
と感じたのか、どうも落ち着かない。 
カナリア先輩は自らの肩を強く抱き締めて、ガタガタと震えている。 
寒気が強いのだろうか。先輩の吐く息だけ白い。これは、明らかにおかしい。 
「ちょ、大丈夫ですか」 
「毛布かけろ。毛布!」 
「Nさん、ヒーターつけてください」 
「塩もっと撒けよ!」 
カナリア先輩の異常に、何とか対処しようと各自が慌てて動き始めた。 
みんなの迅速な動きを後に、僕はただただNさんの隣の助手席に座って 
自分の膝を見つめるだけだった。別に動揺のし過ぎで一歩も動けないとか、 
対処方法がわからないとか、そんな理由からではない。 
それは、ある事実に気づいたからだった。 
さっきカナリア先輩を連れ出そうとした時に感じた違和感の正体。 
気づくんじゃあなかった。 
しかも車の中の、こんな狭い密室のなかで。 



245 : N-5[sage] 投稿日:2007/01/03(水) 02:34:04 ID:zDs4lTJG0 [6/9回(PC)]
>>244 
「あの、Nさん。」 
僕は自らの膝から目を逸らさずに、運転席のNさんに話しかけた。知らせたかったし、確かめたかった。 
Nさんは何も言わない。 
「Nさん…?」 
もう一度呼びかける。 
「なんだ。」 
今度は短く返事が返ってきた。声がえらく低い。 
「あのですね、ちょっと気づいたんですけど。」 
自分でも、自分の声が震えているのがわかる。僕は割りと度胸があるほうで、ただの心霊スポットなんかでは全くビビリもしない自身はある。だが、今は心底― 
「1人多いです。」 
怖い。 
Nさんはやっぱり何も言わない。僕は持てる限りの勇気を振り絞って、決して後を見ないように目だけをNさんの方に向けた。 
Nさんの顔を見た瞬間、冷たい氷を背中に入れられたような寒気が走った。 

Nさんは、顔一杯に引きつった笑みを浮かべていたのだ。 

バックミラーで、後部座席を見ながら。 

「だよなぁ?やっぱり多いよなぁ?はははははははは」 
Nさんは、急に大きな声で笑い出した。 
車のシートから身体に響いてくるような大笑いだった。 
僕は、彼の表情から目を離すことが出来なかった。 
頭がただただ、真っ白だった。 
Nさんは、突然ガバッと後ろを振り返ると 
後部座席の“それ”に向かって叫んだ。 
「オイ降りろよぉ。誰の車だと思ってんだぁ?」 
「それともこのまま、もっとイイ場所に連れてってやろうかぁ?」 
ははははははははははははははは 



246 : N-6[] 投稿日:2007/01/03(水) 02:35:55 ID:zDs4lTJG0 [7/9回(PC)]
>>245 
先輩の笑い声が、僕の頭をガンガン震わせていた。 
後部座席のメンバーは誰一人、何も言わない。 
恐らく彼らは気づいていなかったのだろう。 
頭の中はちょっとしたパニックになっているかもしれない。 
Nさんは笑いながら、今度は猛然とアクセルを踏み込んで 
車を急発進させた。ガックン!という衝撃とともに、車内が 
ひっくり返りそうになる。後部座席の連中が小さく悲鳴を上げた。 
もちろん僕も。 
慌ててシートベルトを締めながら、僕は恐る恐るバックミラーを見た。 
そこには、凄い勢いで後方の闇へと吸い込まれていく山道と、 
その向こうに不気味に浮かび上がる廃病院だけが映っていた。 

国道にのって車が多くなると、Nさんの車はスピードを 
一般速度に落とした。みんなの安堵が手に取るように伝わってくる。 
ふと振り返ると、カナリア先輩の顔色が復活していた。大分落ち着いたようだ。 
誰も口を開かないままに、そのまましばらく走っていた。 


「ああ、こわかったぁ。」とNさんが小さく呟いたのは、それからさらに後だった。 



247 : N-7[] 投稿日:2007/01/03(水) 02:36:28 ID:zDs4lTJG0 [8/9回(PC)]
>>246 
以上です。



248 : 本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2007/01/03(水) 02:51:33 ID:F+fWvK6c0 [1/1回(PC)]
増えた一人はどうなったの?



249 : 本当にあった怖い名無し[] 投稿日:2007/01/03(水) 02:52:39 ID:zDs4lTJG0 [9/9回(PC)]
>>248 
わかんないです。たぶん消えたんでは…?