176 : t[] : 投稿日:2003/01/26 17:47:00
わたしが大学の時に、群馬県の方に旅客機が墜落しました。 
季節は巡り、悪友とツーリングに行こうという事になりコース関係上、墜落した付近の峠を走らねばなりませんでした。 
悪友はいっさい、心霊や妖怪といったものは信じない人なので、「毎年、供養のために花とか関係者が上げているじゃ 
ないか。出るわけないよ!」と、平気な顔をして言います。 
わたしは彼に、「みんな(身体の部分)見つかっているわけじゃないだろ……あぶないって」 
と、言ったのですが、聞くわけがありません。 
だって、コースを変更すると、目的地へは4時間は余分にかかるのですから……。 
しぶしぶ、そのコースを取ることとなりました。 
果たして、問題の峠の入り口に着きました。路肩にバイクを止め、一休みしていると、悪友はわたしを尻目に、 
「ひとっ走りしてくるわ」と言ってコースに入って行きました。 
しかし、10分もしないうちに戻ってきます。戻ってきた友人に、「早かったな。何かあったのか?」 
と聞くと、友人は何をあせっているのか、バイクのサイドスタンドさえ立てるのもおぼつきません。 
平静を装おうとしますが、震える彼の手がすべてを物語っています。 
ようやく、ヘルメットを外した彼の顔は、蒼白状態でした。「出た……。出たんだよ……」 
「何言ってんだよ。いつもの担ぎだろう。お前に見えるわけないだろ……」 
と言って、わたしはバイクのエンジンをかけようとしました。しかし、なかなかかかりません。 
「あれっ、おかしいな……さっきガソリンを入れたのにな」 
「やっぱり……、冷やかしに来た俺たちに来るなといってるんだ……」 

 
177 : t[sage] : 投稿日:2003/01/26 17:48:00
「冷やかしに来たのは、お前だろ……」再度キックするとエンジンはかかりました。 
「じゃ、ひとっ走りして見てくるわ」走り出して、7~8分位すると、なにやら山の雰囲気が違います。 
いつもの生き生きした躍動感なく、時間が止まっている感じです。 
「まずいな……やっぱり近くにいるぞ……」つぎのコーナーを曲がった時、それは的中しました。 
肩のもげている者、足がへし折れている者、頭が潰れている者、全身ただれている者……。 
上げたら切りが無い程の人たちが、ボロボロの状態で列を成し、奥へ奥へと歩いています。 
「うわ…、これはまずい……、気付かれないうちに戻ろう」出来るだけ静かにバイクを停止し、Uターンをしました。 
いや…気付かれてはいるのでしょうが、こちらへは近付こうという気配はありませんでした。 
戻ると友人が心配そうに待ってました。 
「な……」 
「うん……」 
わたしたちのやっと出来た会話はこれだけでした。言葉少なく、わたしたちはコースを変えました。 
それ以来、この夏の時期はそこを通ることはしませんが、今も出るんでしょうか……。 
自分の身体を求めて……。