20 : 続きは今晩[] : 投稿日:2003/04/21 05:37:00
今から十年近くも前の話。 
その日俺はある病気で手術前の検査の為病院に行っていた。(当時19才) 
検査も終わりバスの時間まで休憩所で漫画を読んでた。そこへ一人の女性が 
入って来た。俺はその女性を見るなり雷に打たれたような衝撃を受けた。 
一目惚れだった・・・・・・もろにタイプである。 
漫画読む気もそぞろになりそっちの方が気になってしょうがなかった。 
磁石みたいな強力な力で惹き付けられる思いを感じていた。 
しばらくするとその女性はスラリとした長い足を組み煙草を吸い出した。 
俺は「ゲッ、どんなにタイプでも絶対こんな女好きにならんな」と何故か 
心に強く思った。(煙草嫌いだったので) 
フッと目を上げると女性も俺を見ていたらしくあわてて目を叛けられた。 
俺は何故か激しい憎しみを彼女に感じたが、バスの時間に遅れそうなので 
あわてて休憩所を飛び出していった・・・・・・ 

 
24 : 20の続き[] : 投稿日:2003/04/22 02:04:00
時は流れ一ヶ月後、入院日当日。 
俺が一人部屋で寝ていたら看護婦が血圧を計りに来た。すると馴れ馴れしく 
「どっかで見た事ある顔だね?」と聞いてきた。自他共に認める程寝起きが悪い 
俺は面倒臭いので答えずに黙っていた。間が悪いと感じたのか手早く仕事を 
終えてそそくさと彼女は部屋から出ていった。 
ほどなくして手術は成功。最初の検温時に件の看護婦が回って来た。彼女は俺に 
ついて2~3質問した後「私ね、キミの事知ってるよ」と言った。驚いた俺は「何で?」 
と彼女に聞くが曖昧な笑いをしてうやむやにされてしまった。聞く所に依ると今年 
入ったばかりの新人看護婦で年は俺より2つ上という事が判った。 
彼女は気さくな性格で入院中は色々と俺に冗談を飛ばして来るようになり俺も 
彼女には強い親しみの感情を持つようになっていた。まるで以前からの知り合い 
だったかのように・・・。やがてその感情は奇妙に変化し退院日が近づいてきた 
俺は悩んだ末に恥を承知である思いを伝えようと決心していた。 



42 : 24の続き[] : 投稿日:2003/04/23 04:12:00
「キミが好きなんだ・・・」 
真夜中のほの寒い病棟の廊下で巡回に来た彼女にそう告げた。 
彼女は大きく目を開いて驚いているようだった。 
沈黙の寒い空気が流れる・・・ 
「嬉しい・・・」彼女は顔を俺の肩に預けるように寄せて来た。 
勤務後に俺とよく話がしたいと言う。俺は了解してその時は別れた。 
次の日、勤務後のGパンとTシャツのラフな服装に着替えた彼女をエレベーター 
の前で見つけた。Gパンがよく似合っている。彼女に連れられて一階の休憩所 
に行った。休憩所に着くと彼女はソファに腰掛け足をスッと組んだ。そして 
ハンドポーチの中から煙草を取り出しそれに火を付けた。足が長い・・・ 
「あっ!・・・・」 
その時俺はようやく全てを思い出した。そう、あの時の女性だったのだ・・・ 
「思い出した?」俺に笑いかけながら彼女はそうイタズラっぽく言った。 
俺は何か不思議で見えない大きな力を感じ始めていた。 



43 : ラスト[] : 投稿日:2003/04/23 04:13:00
それから色々な話をした。 
あの時彼女は俺を見て若いの大変だと同情していた事。病棟で俺の喋る事が 
彼女の思ってる事に不思議と似ている事とか。彼女も一度俺と似たような病気で 
過去に入院した事もあるとも言っていた。電話番号を貰った俺は2日後に退院した。 
それからほんの少しだけ交流はあったが些細な事がきっかけで彼女とは疎遠に 
なってしまった。結局彼女と縁は無かったのだろう。 
大学浪人生だった俺は鬱々とした彼女への思いを無理矢理心の奥底に押し込んで 
勉強に励んでいた。そしてしばらくして2~3ヶ月も経った頃だった。 
ある日親父の本棚に地元の名士達が載った分厚い名士録みたいな本を見つけた。 
何気なくヒマ潰しにパラパラと読んでいてある名字の項の所で目を留めた。彼女と 
同じ名字の箇所だった。しばらくしてある人物の子供の欄に目をやった時だった。 
「!」 
「~朋子」、彼女の名前だ。教えて貰った電話番号も住所も掲載されている物と 
まったく一緒だった。偶然なのか?実に不思議な縁を感じていた。 

もしかしたら彼女は運命の人だったのだろうか・・・・・・ 



44 : あとがき[] : 投稿日:2003/04/23 04:14:00
こんな話を書いたのは人との出合いを大切にして貰いたいと思ったからです。 
それまで赤い糸だとか運命の人などと言うことには無関心だった私ですが 
この時を境に深く考えるようになりました。あまりにも不思議な話でした。 
不幸にも今では彼女とは交流はありませんが皆にはもし運命的な縁を感じたら 
それを恐れずに積極的に追い掛けて欲しいのです。後から後悔するような 
真似だけにはなってほしくないのです。相手も実は同じ思いを感じてるかも 
しれません。どうか出合いを大切にして幸せになってください。 

この話は端折ったり少し脚色してる部分もありますが90%はホントの話です。 
私小説風に書いたのは少しでも興味を惹いて楽しく読んで貰おうと思ったから 
です。長文なので三日に分けました。 
この時の出来事で学んだ事は後の私に大きな影響を与えました。実に沢山の事 
を学んだと今では思っています。 
三日に渡り拙い私の雑文をお目に掛けて失礼致しました。ありがとう。