519 : あなたのうしろに名無しさんが・・・[sage] : 投稿日:2002/11/14 18:57:00
うちの祖父は、結婚してから間もなく脳梗塞で倒れ、 
その後遺症で右半身が麻痺してしまいました。 
祖父の若い頃の写真とはかけ離れた顔つきになり、頬はコケて 
目はくぼみ、恐ろしい形相。 
小さな子が見たら思わず泣き出してしまいそうな顔でした。 
よだれや鼻水、糞尿垂れ流し状態で家族の介護を受けていました。 

私は子供心に「汚い」と思い、祖父との交流を避けがちでした。 
こんな体になって何か楽しい事があるのだろうか? 
いなくなってしまえばいいのに、とさえ思う事もありました。 

体の不自由な祖父ですが散歩が大好きで、よく裏庭を 
ゆっくり、ゆっくりと景色を眺めつつ歩いていた姿が胸に残っています。 
よく足がもつれて転倒して怪我をしていましたが、 
それでも祖父は毎日裏庭を歩きました。 
祖父の怪我を手当てする母の姿を見て、日を増すごとに祖父の存在が 
疎ましく思えたものです。 


520 : あなたのうしろに名無しさんが・・・[sage] : 投稿日:2002/11/14 18:59:00
私は高校生になり、祖父は親戚の家に引き取られました。 
鬱陶しかった祖父がいなくなり、私は内心喜んでいました。 

---祖父が親戚に引き取られてから何ヶ月か経ち、夏になりました。 
とても暑く寝苦しい夜、私は夢を見たのです。 
なぜか『キィィィィィーーーーン…キィィィーーーン…』と、高い音が頭の中で響き、 
それに混じって鈴の音も聴こえました。 
夢の中で私はベッドに寝ています。頭の中で何度も何度も鈴の音が響き、 
キィィーーンという音がぐるぐると回りました。 
すると、ベッドの横で黒い影がムクッと起き上がりました。真っ黒で何も見えなかったけど、 
私はそれが祖父だと確信しました。 
自分も起き上がろうとするけど、金縛りのように体がいう事をききません。 
やっとの思いで、「おじいちゃん……?」と呼びかけました。 
ここで目が覚めたのです。 
夢と同じ風景、暗さ…。私はしばらく夢と現実の区別がつかず、ボーッとしていました。 

その日の夜、親戚から祖父が脳梗塞が再発して倒れたと電話がありました。 



521 : あなたのうしろに名無しさんが・・・[sage] : 投稿日:2002/11/14 19:00:00
母と病院に行くと、既に祖父は「脳死」の状態でした。 
機械で呼吸をして、かすかに心臓が動いている状態。 
まるで気持ち良さそうに眠っているかのような表情でした。 
私は祖父の手を握り、「おじいちゃん、おじいちゃん」と呼びかけました。 
しかしその声が祖父に届く事はありません。それから何日も、何日も、 
祖父の心臓は動き続けました。 
病院から危篤状態だと連絡があり、何度も親戚が全員病室に集まりました。 
しかしその度に祖父は持ち直し、それが何週間も続きました。 
病室で母は涙を流しながら言っていました。「はやくおじいちゃんを楽にさせてあげて…・」と。 

その翌日。母が玄関でなにやらゴソゴソとしていました。 
聞くと、母も夢を見たそうです。 
裏庭で悲しそうな顔をして佇む祖父。 
「どうしたの?」と聞くと、ぽつりと「サンダルが無い。」 
祖父の足元を見ると裸足だったそうです。 
母が言うには、「おじいちゃん裸足だから天国行けないんじゃないかな」との事。。 
大好きな散歩に出かける時にかならず履いていた物を、母は袋に入れました。 

そのサンダルを病室に持って行った夜、祖父は静かに息を引き取りました。 



522 : あなたのうしろに名無しさんが・・・[sage] : 投稿日:2002/11/14 19:02:00
葬儀の最中、祖父の安らかな顔を見て私の目からは涙が止まりませんでした。 
どうしてもっと祖父と話さなかったんだろう、優しくしてあげなかったんだろう。 
どうして真正面から向き合って接する事ができなかったんだろう。 
もうおじいちゃんは戻って来ないのに。 
なぜこんな大切な事がわからなかったんだろう。私は後悔でいっぱいでした。 

それから5年経ち、私は1児の母親になりました。 
もうすぐ3歳になる我が子を連れて、お墓参りに行こうと思います。 
こんなに元気にやってるよ、孫もこんなに大きくなったよ、って。