233 : あなたのうしろに名無しさんが・・・[] : 投稿日:2002/08/28 03:21:00
友だちのお父さんが、自分にしてくれた話。 
彼には、物心ついた頃から母親がいなかった。 
母親は、死んでしまったと、彼の父親に聞かされていた。 
そして、彼が7才の時、父親が新しい母親を連れてきた。 
新しい母親は、彼のことを自分の子供のように、 
大切に育ててくれたので、3人家族になってからの方が、 
彼の人生は幸せなものだった。 
そして、彼が高校生になったばかりの頃、 
いつものように、通学路を家に向かって歩いていると、 
30代後半位の、着物を着た女性が向かいから歩いてきた。 
彼の住んでいたところは、まだまだ当時は田舎で、 
田んぼや畑、山などに囲まれていた。 
彼の通学路は、そんな山のふもとにある舗装すらされていない、 
人がふたり、やっとすれ違えるような一本道だった。 


234 : あなたのうしろに名無しさんが・・・[] : 投稿日:2002/08/28 03:23:00
車も通れない道なので、地元の住民が(彼も含めて)、 
徒歩でちょっと、隣り町に用を足しに行く、という時などに 
使う道なので、すれ違う人たちは、必ず顔見知りなのだが、 
向かいから彼の方に歩いてくる女の人は、面識がなかった。 
もうそろそろすれ違う、という時に、彼は立ち止まり、 
彼女を先に通してあげるために、一歩道から退いた。 
着物を着た女性は、すれ違いざまに微笑んで言った。 
「ありがとう」 
そして、何かを彼の手に握らせ、そのまま何事も 
無かったかのように、去って行った。 
彼の手のには、女性物の、上品な腕時計が握られていた。 
着物の女性の腕時計なのだろうか。 
道を譲って、お礼を言われるのは驚かないが、 
なぜ時計を? 道を譲ったお礼にしては、大げさだ。 
彼は困惑しながらも、手に持った腕時計と、歩き去る 
着物の女性の後ろ姿を、交互に見つめながら立ち尽くした。 
家に帰った彼は、そのまま自分の部屋に入った。 
ベッドに仰向けになりながら、時計を観察する。 



235 : あなたのうしろに名無しさんが・・・[] : 投稿日:2002/08/28 03:24:00
時計の針は、止まっていた。 
こわれているなかな? だからくれたのか? いらないから? 
もしかして、この中に何か変な物が入っているんじゃ? 
あの女性は、自分を何かのワナにはめようと? 
などと、考えれば考えるほど、彼の思考はあっちの方向に 
行ってしまい、遂に、 
「よし! 分解してみよう」 
という結果になった。 
中に入っていたものは...若い頃の彼女らしき女性が、 
生後1ヶ月程の赤ん坊を抱いている、色あせた白黒写真だった。 
時計の形にあわせて、切り抜いてあるその写真の裏には、 
昭和○年○月○日と、記してある。 
その日付は、まさしく彼の生まれた日から、数週間後のものだった。 
あれは、母だったのか? 自分が生まれてすぐに、死んだのではなかったのか? 
そう思ったと同時に、彼の父が部屋に入ってきた。 
彼は急いで、時計をまくらの下に隠した。 
父の様子がいつもと違う。泣きはらしたような真っ赤な目をしていた。 
父は彼に言った。彼の母親は、実は死んでなかったこと。 
父親は、彼にうそをつき続けていた事を詫びた。 
(これ、理由話すと長いので略) 
現在、東京におり、癌を患い入院中で、もう長くないとのこと。 
彼の母親が、病床で彼の名前を、うわごとで何度も言うので、 
見かねた彼女の弟が、彼の父に、会わせてあげて下さいと、 
泣きながら電話をしてきた、というのだ。 



236 : あなたのうしろに名無しさんが・・・[] : 投稿日:2002/08/28 03:25:00
東京で入院中、では、あの着物の女性は? 
彼は、父にはその日にあった出来事を話さず、 
次の日東京へ向かった。時計も一緒に。 
再会した母は、やせ細ってはいたが、とても美しかったという。 
もう、起き上がることも出来ない状態だったが、 
彼を見ると、自力で起き上がろうとしたので、彼は駆け寄り、 
母親を支えて、上半身を起こしてあげた。 
改めて、母親を見つめると、やはり時計をくれた女性に 
よく似ていた。彼は自分のズボンのポケットから、例の時計を 
取り出して、母親に見せた。 
母親は、その時計を見て、驚いていた。それは彼女のものだったからだ。 
まだ、癌が発見される前、元気だった時に、母親は 
その時計をいつも、身につけて暮していた。 
写真も、母親が、いつも息子と一緒にいられるようにと、 
その腕時計の中に、入れたんだそうだ。 
ある日の朝、腕時計が止まっていることに気づいた母は、 
会社の帰りに修理に出そうと、バッグに入れて、会社に向かった。 
そして、駅でバッグごと置き引きにあってしまったのだと。 
その腕時計の中の写真が、彼女のただひとつの、彼の写真だったので、 
それからしばらく、彼女は泣き明かしたそうだ。 
3ヶ月後、彼は母の最後を看取った。そして、彼女の細くなってしまった 
手首に、その時計をつけてあげた。もうなくさないよ、という言葉と共に。



237 : あなたのうしろに名無しさんが・・・[] : 投稿日:2002/08/28 11:24:00
還ってくるものだね。 



238 : あなたのうしろに名無しさんが・・・[] : 投稿日:2002/08/28 15:39:00
泣けました。 
不思議な話でした。 



239 : あなたのうしろに名無しさんが・・・[] : 投稿日:2002/08/28 15:47:00
>>236 
じんわり、最後が泣けます…