52 :あなたのうしろに名無しさんが・・・ []投稿日:04/05/05 19:48 ID:nliwDUrR[1/1回]
ある中年夫婦の話だ。夫婦には子供はなく、一匹の飼い猫だけが家族だった。 
二人とも本当は子供がほしかったのだが、数年前に一度交通事故で流産していて 
なかなか子供が出来なかった。猫を飼っているのは、その寂しさを紛らわすため 
だった。 
ある年、夫は仕事が忙しく毎日休みもろくに取れず、帰宅時間も十二時をまわる 
ことが多くなり、妻も夫の帰宅を待たずして就寝するすれ違いの生活をするように 
なった。そんな日が続いたある日、夫が仕事から疲れて帰宅するといつものように 
家の電気は消えていて、妻も寝ているようだった。夫は暗い家の中、玄関からすぐの 
リビングの電気だけつけて、かるい夜食をとりながら、ふと思い出した。今日は 
流産で亡くなった子の命日だった事を、あれから何年もたち、その時の悲しみもうすれ 
ていて去年までは一応、毎年の供養を欠かしていなかったのだが、今年はすっかり 
忘れていた。妻とも、しばらく満足に会話をしてなかったので、妻がやっておいて 
くれたかなと思っていたとき、「にゃ~」と飼っている猫が階段の方で鳴く声が 
聞こえた。妻が二階の寝室で寝ているので、妻の布団にもぐり込むために階段を 
上っているのかと思ったが、鳴き声をあげながらも、なかなか階段を上れてない 
ようで、しばらく鳴き声が続いて聞こえていたのだが、よくよく聞いていると 
「にゃ~」ではなく「ぅあ~」と、さかりのついた時の赤ん坊のような声で鳴いている。 
なかなか階段上れないし、さかりのつく時期でもないのに、もう歳かなと 
思いながら、様子を見ようと階段へ向かい電気をつけた時、もう猫は階段を上り 
きろうとしていた。いや、それは猫ではなかった。小さな血まみれの赤ん坊が 
はいずりながら階段を上っていた。赤ん坊は、夫のほうを振り向き、その晴れ上がった 
ような目で見つめ一度だけ「ぅぁあ~~」と泣き、妻の眠る寝室へ入って行った。 
間もなく、二人には待望の子供が出来た。