342 : ◆ZBeHS1GIaA [sage] : 03/09/05 05:18
昔な 俺が小学生ん頃、 
爺さん家にデッケー桜の木があったんだ。 
春になると花がドワァーッと咲いてな。 
ある日、爺さんと一緒に暇な一日、桜を眺めてた。 
そん時爺さんがふと俺に言ったんだな。 
「この桜の木は怒らすと怖いんだぞ。悪いことすると見てるんだぞ」 

ある日、友達5人くらいでそこで鬼ごっこをした。 
鬼に捕まった奴は桜の木の下で待たなきゃいけない。 
後でわかったんだが捕まった一人がスコップで木の皮をはがしてたんだ。 
あの時は全然気付かなかった。 


343 : ◆ZBeHS1GIaA [sage] : 03/09/05 05:30
最後の一人が捕まったとき(ようするに木の下に全員集合) 
突然、そいつが叫んだ。 
「ぎゃぁああああうわわああがあぁ△×●♪$!!!!」←もう後半部分は表現できん。 
そして向かいにいた奴に掴みかかってひきずり倒した。 
俺たちは呆然とするしかなかった。 

そしたら爺さんがパッと出てきて暴れてるガキを抱えあげたんだな。 
バタバタしながらも爺さんの腕に噛み付いた。 
それこそギリギリと音が出そうなくらいに。 
腕から血がポトポト落ちて(鼻血くらい) 
爺さんは一瞬だけ顔をしかめてそいつの頭を撫でながら 
「大丈夫だ。もう大丈夫だ。」と言って縁側に移動して膝の上に座らせて 
しばらくそうしてた。暴れてた奴は嗚咽というか「ヒック ヒック」肩で息してた。 



344 : ◆ZBeHS1GIaA [sage] : 03/09/05 05:40
俺たちはどうしていいかわからなくてただ呆然と突っ立ってたけど 
暴れてた奴が落ち着いたんでみんな家に帰ることになった。 
暴れてた奴は口のまわりが血で真っ赤になっててオバQみたいだったのが印象的だ。 

みんなが帰ってから爺さんは笑いながら 
「今晩は爺ちゃんちで晩飯食ってけぇ」と言ったんで食ってくことにした。 
晩飯のときに爺さんが婆さんに今日のことを話したら婆さんは 
「大事なくて良かったですねぇ その子供もケガしなくてよかった」と言った。 



345 : ◆ZBeHS1GIaA [sage] : 03/09/05 05:47
しばらくして暴れた奴が親連れて爺さんの家に謝りにきた。 
そいつが帰ってきたとき服に血が付いてたからそいつの母ちゃんが問いただしたそうだ。 
そいつはその時の状況をあんまり覚えてなくて 
ただ俺ん家の爺さんに噛み付いたことは覚えてたらしい。 
「こんなことする子じゃないんですが・・どうもすいませんでした」云々 
そしたら爺さんがニコッと笑いながら 
「子供らはなぁんも悪いことはしとらん また遊びにおいで」と言って 
そいつの頭をくしゃっと撫でた。 

婆さんとそいつの母ちゃんが少し話してたときに爺さんがそいつに小さい声で言った。 
「もうあの桜にイタズラしちゃ駄目だぞ 木もやられると痛いからなぁ」 

俺はそのあとそいつがお詫びに持ってきた桃をむさぼるように食べた。うまかった。 



346 : ◆ZBeHS1GIaA [sage] : 03/09/05 05:56
去年、爺さんの三回忌ん時にふとこのことを思い出して 
婆さんに聞いたんだな。「そうえばあの桜になんかあったんか?」って 
そしたら婆さん「なんもない。人が一人埋まっとるだけだぁ。」って言った。 
俺「!! それ本当か?」 婆さん「へへ 嘘に決まっとろう」 

事実は藪の中。 
私事の思い出話を長々とすまんかった。