87 : あなたのうしろに名無しさんが・・・[sage] : 投稿日:2003/04/08 14:54:00
タクシー運転手Aさんは、とある雨の夜に夜勤で車を走らせていた。 
「こんな日は出るって噂なんだよな」 
ここ数日は何故か客を拾えず、噂のせいもあって鬱々とした 
気持ちでいたAさんの目に、道ばたで手を挙げる女性の姿が移った。 
「おっ、客だ」 
さっそく車を停め、その女性を乗せたAさん。 
行き先を聞いて走らせるうちに、女性が噂に語られる幽霊の特徴と 
酷似していることに気が付いてしまった 
「まさか・・・」 
Aさんは平静を装いながら、内心はかなり怯えてしまった。 
気になり出すと、どうしても女性が幽霊に思えてしかたがない。 
「どうして俺がこんな目に・・・ 成績も落ちてるってのに・・・」 
車も放り捨てて逃げ出したい気持ちに駆られた。 

そこでAさんはハッと気が付いた。自宅のすぐ近くに来ている! 
「お客さん、私ちょっと家に忘れ物してきちゃいまして、 
すぐそこですので取りに行っていいですか?」 
「・・・はい、どうぞ」 
か細い声で女性は答えた。 

後部座席で、女性は内心ほくそ笑んでいた。 
(幽霊のふりするだけで、こんな簡単にただ乗りできるなんてね) 
タクシー幽霊の噂が立ち始めたころに手口を思いつき、 
以来ずっと常習犯だったのだ。 


88 : 87[sage] : 投稿日:2003/04/08 14:56:00
やがて車は大通りを外れて住宅街に入っていき、ある家の前で停まった。 
「ここです。すぐ戻ってきますから、ちょっと待ってて下さい」 
Aさんは家族の待つ家に戻りながら、安堵と幸福感で満たされた。 
(ああ、やっと帰ってこられた・・・) 

女性は大人しく待っていた。 
しかし5分経ち、10分が過ぎてもAさんは戻ってこない。 
「変ねえ、見つからないのかしら」 
あまりに遅いので、とうとう幽霊のふりをするのもやめにして 
呼びに行ってみることにした。 

ピンポーン 

チャイムを鳴らすと、Aさんの妻と思しき年格好の女性が出てきた。 
心なしか元気がなく落ち込んだ様子だった。 
「どちら様でしょう・・・?」 
「あの、私今までご主人のタクシーに乗っていた者ですが」 
女性がかいつまんで事情を話すと、妻の顔色が見る見る変わっていった。 
「そ、それは何かの間違いです・・・ 主人は3日前に亡くなったんですから」 
妻はそれだけ言うと泣き崩れた。 
女性は驚いて後ずさった。その目に家の表札が映った。 
書いてあったAさんの名前、その名前に女性は覚えがあった。 

数日前ニュースや新聞で騒がれた、タクシー強盗殺人の被害者だった・・・ 


バブルの頃、タクシー強盗が多発してた頃だった記憶がある