2019年01月

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    婆ちゃんが子供の頃(1930年ごろ)の話。 
    近所の家に座敷牢があった。座敷牢と言っても床の土がむき出しの掘っ立て小屋に鍵をかけて閉じ込めておくという犬小屋みたいなもん。 
    入っているのはその家の娘。産まれた時から頭がおかしかったらしい。 

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    友人とカラオケに行った帰り道だった。 
    俺の家は防風林の中にあり、大きな道路から直線で帰るには中学校の横か墓地の間を抜けなきゃいけない。もう日は沈みかけていて、ちょっと怖かったので友人に家まで送って貰った。 
    学校から生徒がいなくなってしまうとこの道は殆ど誰も通らない。 

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    私が大学生の時レンタルビデオのお店で働いていました。 
    そのお店は店長の趣味でホラーやオカルト関係のビデオが多くて、大学の映像研究会とかそんな人たちが持ち込んだ 
    何が映ってるか分からない自主制作ビデオも(無料ですが)置いてくれる少し珍しいお店でした。 

    お店はそう忙しいわけでは無く、昼間の暇な時間には返却されてきたビデオの撒き戻し作業や 
    延滞のチェックをしていたのですが、時々お店に持ち込まれた自主制作映画の検閲みたいな事もやっていました。 
    その日もいつもと同じようにどこかの大学生のグループが撮影したビデオを見ていたら、妙な視線を感じてきました。
     
    私の後ろは棚になっていて、そこにはこれからチェックしなければいけないビデオが積んでありました。 
    普通ビデオには○○大学映像部というようにパッケージやタイトルに工夫や撮影者の名前が入っているのが普通でしたが 
    気になった1本にはそのどちらも無く、誰もそれを受け取った覚えが無かったそうです。 

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    外は雨だ。額に、顔に、大粒の雫がかかる。雨脚はさほど強くないが、空を見上げようとしても、なかなか目を開けられない。 
    それ以前に、真っ暗な空にはどれほど目を凝らそうとも何も見えなかった。 
    目を細めていた師匠が「くそっ」と短く叫ぶと、家の中に取って返した。一分と経たずに飛び出してきたその手には、車の鍵が握られていた。 
    「来い」 
    師匠は僕にそう言うと、駐車場へと駆け出す。 
    「こんな雨の中、どこ行くんです」 
    僕は追いかけながら叫ぶ。心臓がドクドク言っている。さっきまでの穏やかな時間はどこに行った? ていうか、返事は? 
    エンジンが掛かる音を聞きながら助手席に飛び乗る。 
    「傘も何も持って来てないですよ」 
    運転席の師匠に訴えるが、師匠は親指で後部座席の方を示し、「合羽と傘は常備品だ」と言って車を急発進させた。 
    フロントを叩く雨粒を跳ね飛ばしながら、ボロ軽四は住宅街をありえない速度で走る。急ハンドルを切っている間に電信柱が迫るのが見えて思わず仰け反った。 

    【せんせいはこの街で誰よりもたくさん空を見てますよね 後編】の続きを読む

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    大学二回生の夏だった。 
    ある時期、加奈子さんという僕のオカルト道の師匠が、空を見上げながらぼんやりとしていることが多くなった。 
    僕の運転する自転車の後輪に乗り、あっちに行けだのそっちに行けだのと王侯貴族のような振る舞いをしていたかと思うと、ふいに喋らなくなったので、そうっと背後を窺うと、顔を上げて空をじっと見ていた。 
    「なにか面白いものがありますか」 
    と訊くと、「……うん」とは答えるが、うわの空というやつだった。 
    僕も自転車を止め、空を見上げてみたが雲がいくつか浮かんでいるだけで特に何の変哲もない良い天気だった。 
    その雲のうちの一つがドーナツのように見えたので、ふいに食べたくなり「ミスドに行きませんか」と訊くと、やはり「……うん」とうわの空のままだった。 
    連れて行くとドーナツを三つ食べたが、やはりどこか様子がおかしかった気がする。 

    【せんせいはこの街で誰よりもたくさん空を見てますよね 前編】の続きを読む

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    そこは日中、別の仕事をしている先生が、夜間に開いている塾だった。 
    私は日の暮れかけた道を歩いて、そこへ向かっていた。途中で筆箱を忘れたことに気づいて取りに帰ったりしたせいで、初日だというのに遅刻しそうになって少し焦っていた。 
    今みたいには舗装もちゃんとされていない道を早足で歩いてると、大きな廃工場の前を通りがかったんだ。 
    普段はあんまり通らない道だったから、何気なくその人気(ひとけ)のない不気味な建物の中を覗き込みながら通り過ぎようとしたら…… 
    錆び付いてところどころ剥がれたスレートの波板の外壁、その二階部分に窓があって、そこに誰かがいた。すうっと、消えていったけど、確かに私のことを見下ろしていた。 
    人間じゃないことはすぐに分かった。そう感じたんだ。 
    怖くなって走った。走って、先へ進んだ。 

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    KUMA1892068_TP_V

    小高い丘のなだらかに続く斜面に、藪が途切れている場所があった。 
    下草の匂いが濃密な夜の空気と混ざりあい、鼻腔を満たしている。その匂いの中に、自分の身体から発散させる化学物質の香りが数滴、嗅ぎ分けられた。 
    虫除けスプレーを頭からひっかぶるように全身に散布してきた効果が、まだ持続している証だった。 
    それは体温で少しずつ揮発し、体中を目に見えないオーラのように包んで蚊やアブから僕らを守っているに違いない。 
    斜面を背に寝転がり、眼前の空には月。そしてその神々しい輝きから離れるにつれ、暗く冷たくなっていく宇宙の闇の中に、星ぼしが微かな呼吸をするように瞬いているのが見える。 

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