頼りなくまたたいている明かりの下、最初の曲がり角を越えると土蔵の入り口が見えた。そろそろと歩み寄り、小さな鉄製の扉を手前に引く。
きぃ……
耳障りな音がして、同時に真っ暗な扉の奥からどこか生ぬるいような空気が漏れ出てくる。扉は狭く、それほど大柄でもない真奈美でも、身を屈めないと入ることが出来ない。
真奈美は身体を半分だけ扉の中に入れ、腕を回りこませて壁際を探る。白熱灯の光が、暗かった土蔵の中に広がった。ホッと人心地がつく。
もはやそれを手に取る主のいない骨董品や古民具の類が、四方の壁に並べられた棚や箪笥の上にひっそりと置かれている。
本当に値打ちのあるものは終戦の前後に処分したと聞いているので、今残っているのはそれを代々受け継いできた自分たちの一族にしか価値のないもののはずだった。
真奈美は懐から写真を取り出す。ご丁寧にも叔父が、くだんの茶壷が紹介された雑誌の切抜きを送ってきたのだった。
それと見比べながら、壷などが並べられている一角を往復していると、どうやらこのことらしい、というものを見つけることが出来た。
なるほど、形や色合いは確かに似ている。しかし手に取ってみるとやけに軽く、まじまじと表面を眺めると造作も安っぽく思われた。
やはり叔父の思い違いだ。そう思うと少し楽しくなった。
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