2016年02月

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    342 : 稲男 ◆W8nV3n4fZ. [sage] 投稿日:2010/10/22(金) 22:20:09 ID:mvxwPn920 [3/4回(PC)]
    「アメーバって知ってるだろ。それが物を侵食する・・・・・・食作用、って言うんだがな。まあ、連中の食事だ。その時、仮足と呼ばれる突起を出す。偽足とも言うが」 
    何の話だろうか。 
    俺は生物は好きじゃない。 
    理数系ではあるが、どちらかというと物理が得意なのだ。 
    「その突起で物を侵食するんだよ。飲み込むんだ。じわじわとな。あの女は、それだ」 
    「つまり、ルアーとか、そういう物だと考えていいんですか。あの人は」 
    「お、いい例えだ。先駆けだな。お前には見えないんだろうが、あいつの後ろにはわけのわからん物がいるぞ。黒くて、どろどろした、取り込まれた奴らの固まりがな」 
    彼女に興味を持ってしまうと、引き込まれるのだろうか。 
    より多くの人を引き込む為に、少しでも感覚の鋭い人には見えるようになっているのだろうか。 
    わからないことばかりだ。 
    「あいつらは仲間を探してるんだ。一人でも多く。あの交差点、結構事故多いだろ。つまり、そういうこと」 
    俺はなんだか嫌だった。 
    あの人がそんな事の為に存在していると思いたくない。 
    「でも、それなら俺に近い歩道で居た方がいいんじゃないですか。今日は逆側に移動してましたけど」 
    先輩は鼻で笑う。 
    「あいつらの考えてることなんてわからないよ。お前があれにどんな感情を持っているかは知らん。けど、俺は事実を言っただけだ。アドバイスは『関わるな』だよ」

     
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    1 : 名無しさん[] 投稿日:2012/08/19(日)16:53:55 ID:o3tHvMTV7 [1/8回]
    昨日のほんとにあった怖い話みてさ
    そういや今年心霊系の番組見てねぇな、見てぇなと思って
    怖い話で検索していろいろ見てたんだけどさ

    ししのけっての見てもしかしてこれ俺が墓参り行ったときみたやつじゃね
    と思ったわけです
    覚え書きなんで曖昧なとことかところどころすっとばしちゃってるとこあるかも

    それとししのけかもしれないものを見ただけで怪奇現象とかは何にも起こってないです。
    暇してるから見にきてくれたんだろうしちょっと聞けよ。オチも何もないからな


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    340 : 稲男 ◆W8nV3n4fZ. [sage] 投稿日:2010/10/22(金) 22:14:47 ID:mvxwPn920 [1/4回(PC)]
    一年の秋。 
    その頃俺は遅刻を罪と思っていなかった。 
    別に出席時数だけ取れていればいいので困ることは無かったが、一時期頻繁に遅刻をかましていた。 
    原因はネットにハマったことなのだが、俺はそれをちょっとかっこいいと思っていた。 
    あー全然寝てねーわー、だとか、ちょっと自慢げに言っていたような気がする。 
    我ながらとんでもなく馬鹿だと思うが、とにかく一ヶ月ほど殆ど毎日遅刻していたのだ。 
    大体一時間目をスルーして登校していたのだが、ある日ふと気付く。 
    同じ時間に登校している女の子がいたのだ。 
    いつも彼女は徒歩で、俺は自転車だったから、いつも追い抜いていた。 
    白くて、細くて、なんというか、病院の窓から葉が落ちるのを眺めていそうな、そんな女の子だった。 
    女の子というが、恐らく年上だった。 
    彼女は同級生にいなかったから、多分先輩なんだろう。 
    鮮明に覚えている。 
    押せば倒れそうな後ろ姿も、ポニーテールにしていた黒い髪も、すれ違う寸前見た白いうなじも。 
    追い抜いてから振り向いたことは無かったから、どんな顔をしていたのかはわからない。 
    ただ、なんとなく綺麗な顔をしているように思っていた。 
    ある日、俺はまた遅刻した。 
    いつものように自転車を走らせていると、あの人が逆側の歩道にいた。 
    いつもと違う。 
    俺は少しがっかりした。 
    今日は彼女の後姿を見ることが出来ない。 
    俺は気になって仕方なかった。 
    仕方なかったから、ついやってしまったのだ。 
    俺は彼女を通り過ぎて、すぐ振り向いた。 
    俺は彼女の顔が見たかった。 
    俺の想像の中にいる、綺麗な顔と一致しているか確かめたくて。 
    しかし、振り向いた先には、誰もいなかった。

     
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    111 : 自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 02:53:58 ID:94SXlE7nO [1/5回(携帯)]
    やっと仮眠時間だ 
      
    定時制の高校というのはいろんな人が通う。 
    夫と子供の面倒を見ながら、薬剤師免許を取るため学歴を得ようと頑張る人の良いおばさんもいれば、 
    傷害でパクられたことを武勇伝のように話すDQNもいるし、 
    授業が終わる度に「今何々の授業が終わったよ。もう帰りたいよママ」と母親に電話する大の男もいる。 
    まあ、とにかく濃い面子が揃ってたなあと思う。 
    俺自身働きながら学校に通う二十歳過ぎの高校生なんてものをやっていたわけだが。 

    高一の春だった。 
    新入生の初々しさとは全くもって無縁な俺は、参っていた。 
    俺は自分が憑かれていたり、近くに居ると解る性質の人間で、そう言った人間の大半がそうであるように 
    そういうものに対する自衛手段を持っていた。 
    しかしその時は状況が少々特殊で、俺は心底から参っていた。 

    左耳はかりかりという音を聞き続け、頭の中では説明しがたい音響が鳴りっぱなしだ。 
    体は常に鳥肌が立ち掛け、視界は不意に靄がかかったり何かが過ったりする。 
    こういった症状は近くに居るか、もしくは自分が憑かれている時に出る。 
    実際に憑かれてるという実感が有った俺は、当然のように原因を探し、身構える。 
    どこだ。いつ来る。どこから来る。初めは雑多なもの寄せ集めだったはずなのに。 
    起きている間は常にびくびくと周りを警戒し、また、眠りに落ちてからも悪夢を見る。 
    見つけさえすれば何とかできるのに。俺の精神状態はどん底だった。

     
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    103 : 稲男 ◆W8nV3n4fZ. [sage] 投稿日:2010/10/16(土) 22:22:15 ID:lZM9Igr50 [7/10回(PC)]
    翌日、病院の待合で先輩と会った。 
    先輩は両腕に包帯をぐるぐる巻いていた。 
    「なんか、右手の人差し指と中指、あと小指が折れてるって。人差し指は綺麗にイってたけど、中指と小指は細かくちくちく折れてて治るのもちょっとかかるかもってさ」 
    笑って右手を振る。 
    「あの、先輩。昨夜、何があったんですか。アレは結局なんなんですか」 
    先輩がにやりと笑う。 
    「解説しようか。まず、アレの正体だが・・・・・・簡単に言うと、ヨーコだ」 
    比較的無事な左腕でズボンのポケットを探る。 
    と、中から紙に包まれた丸い物を取り出した。 
    直径1cmくらいの玉だ。 
    「まあ、ビー玉なんだけど。これがあの化け物になった。おい、そうバカ面するな。本当だ。例えば、だが」 
    先輩は包み紙をぺりぺりと剥がす。 
    中身は水色の透明なビー玉。 
    包み紙には、どこかでみた模様が入っていた。 
    「これがベッドの下に転がっていくだろ。ふとした瞬間に、それがきらりと光っているのを目撃するんだ。脳みそは連想する。光る玉、眼、顔、人」 
    手のひらの上でビー玉を弄びながら続ける。 
    「そして、その想像にはっきりした形が出来る。それはベッドの下に人間ということから連想された都市伝説だ。その想像をした人間が、少し変わった奴だったら」 
    「そう、人より少しだけ、そういうモノに近い奴だったら。その想像は、何かにキャッチされ、実現される。そういうもんだ」 
    頭の中で整理する。 
    つまり、ビー玉を見たヨーコさんが、ベッドの下の男を想像し、それが現実になった? 
    「あるんですか。そんなこと。大体、それならどうやって追い払ったんです」 
    先輩は口の端をさらに歪める。 
    「実現したってことは、俺と同じ土俵にいるってことだ。想像相手じゃ勝ち目もないが、そこにいるならどうとでもなる。言っただろ、これは眼だ。あいつの。引っこ抜いてやった」 
    この怪我は、抵抗されたからだ。と。 
    ベッドの下に手を突っ込んで、得体の知れない物に指を捩じ折られながら、それでも相手の眼を抉って引っこ抜いた。 
    ・・・・・・やっぱり、この人は尋常じゃない。 
    「最初はな。ヨーコの世界の中にしかいないのかと思った。あいつは、なんていうか、上位の世界を持ってる。だから、その中にいれば勝てなかった」 
    何のことだかよくわからないが、なんにせよ、この二人は段違いだと思った。


    【先輩と下男と俺とヨーコさん  後編】の続きを読む

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    100 : 稲男 ◆W8nV3n4fZ. [sage] 投稿日:2010/10/16(土) 22:16:59 ID:lZM9Igr50 [4/10回(PC)]
    ヨーコさんは首を振った。 
    「おいおい。一見すればわかるだろう。ほら、ベッドの下に人が入れる隙間なんて見えるか」 
    先輩に言われてベッドの下を覗いて見る。 
    確かに、10cmにも満たないような隙間しかない。 
    「そんな所に入っていけるようなヤツは、警察になんとか出来る相手じゃない」 
    ヨーコさんが溜め息をついた。 
    「だから、この人に相談したわけ」 
    先輩がくすぐったそうに体を揺する。 
    頼られて嬉しいのだろう。 
    そしてやっぱりヨーコさんは頼りたく無かったのだろう。 
    寝室に入れるのも嫌だったのかもしれない。 
    「さて問題はこれからだ。ヤツはいつ出るかもわからないし、どんな物かもわからない。だからとりあえず、昨日の状況を再現してみようか」 
    要するに? 
    「つまり、ヨーコさんに寝てもらうって事ですか」 
    ヨーコさんの頬がひくりと動いたのを俺は見逃さなかった。 
    楽しそうな先輩を見ながら、俺はヨーコさんに耳打ちする。 
    「……あの、一応俺もいますし。先輩、多分ヨーコさんよりお化けに興味あると思うんで」 
    安心してください。心配はわかりますが。 
    ヨーコさんは頷いてくれた。 
    「着替えるから、一回出て」 
    俺は名残惜しそうな先輩を連れて寝室を出た。 
    「先輩、実際の所どうなんですか。見当付いてたりしないんですか」 
    先輩は少し難しい顔をしていた。 
    「実際の所、皆目だ。何も見えないし感じない。かなり変わり種なのか、それとも、相当上等なヤツかどっちかだろうな」 
    驚いた。 
    先輩の感覚に引っかからない相手なんて、この時が初めてだった。 
    嫌な想像が膨らんでいく。 
    しかし俺の妄想は、ヨーコさんの声でかき消された。 
    「着替え終わったよ」 
    部屋と同じ、淡いピンクのシンプルなパジャマだった。 
    うん、可愛らしい。 
    先輩がまた少し興奮したのがわかった。

     
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    97 : 稲男 ◆W8nV3n4fZ. [sage] 投稿日:2010/10/16(土) 22:10:44 ID:lZM9Igr50 [1/10回(PC)]

    「ベッドの下の男を退治するぞ」 
    一年の冬、エアコンの無い自分の部屋を嫌がって、ファミレスに逃げ込んでいた先輩が言った。 
    「それって、都市伝説のアレですか」 
    ベッドの下の男。 
    ある晩、友達と部屋で遊んでいると、急に友達が外に出ようと言い出す。 
    どうしても外に行きたいという友達に、しぶしぶついていくと、友達の様子がおかしい。 
    問いただすと、「さっき偶然見えたんだけど、ベッドの下に刃物を持った男がいた」……。 
    それなりに有名な都市伝説である。 
    何度かテレビで語られているのも見たことがある。 
    「そう、そのアレだ。アレを退治する」 
    先輩の目が爛々と輝いている。 
    いつになくやる気満々なようだ。 
    「でも、先輩は布団でしたよね。誰の所に出たんですか」 
    おかわり自由のコーヒーを一気飲みして先輩が立ち上がる。 
    「これから現場に行く。ついてくるだろ」 
    時刻は夜の九時。 
    帰って寝るにはちょっとだけ早かった。 
    「わかりました、お供します」 
    先輩は笑った。 
    ちなみに、先輩の食事代も俺が出した。

     
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    36 : 稲男 ◆W8nV3n4fZ. [sage] 投稿日:2010/10/14(木) 18:23:52 ID:awVTwrbQ0 [4/6回(PC)]
    テンプレートな屋上。 
    コンクリートの床に、申し訳程度の転落防止用鉄柵。 
    柵に途切れている部分は無かったが、乗り越えようと思えば子供でも可能だろう。 
    「思ったより普通ですね。やっぱり自殺だったんでしょうか」 
    先輩は無言だ。 
    つかつかと歩き、屋上の真ん中あたりに立ち、手招きをする。 
    俺は従って隣に立った。 
    「お前、何とも無いか」 
    はぁ、と気の抜けた返事をする。 
    何も見えないし何も聞こえない。 
    「なるほど、彼女は波長が合ったのか、それともかなり強い人だったのか。とにかくそれなりの才能はあったらしい。そりゃ飛ぶ」 
    先輩は無表情に言う。 
    心なしか口調が緊張していた。 
    「おい、帰るぞ。全部わかった」 
    先輩は早口に言うと、早足に屋上を去った。 
    俺はまた慌てて追った。

     
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    111 : 自治スレでローカルルール他を議論中[sage] 投稿日:2010/10/17(日) 02:53:58 ID:94SXlE7nO [1/5回(携帯)]
    やっと仮眠時間だ 
      
    定時制の高校というのはいろんな人が通う。 
    夫と子供の面倒を見ながら、薬剤師免許を取るため学歴を得ようと頑張る人の良いおばさんもいれば、 
    傷害でパクられたことを武勇伝のように話すDQNもいるし、 
    授業が終わる度に「今何々の授業が終わったよ。もう帰りたいよママ」と母親に電話する大の男もいる。 
    まあ、とにかく濃い面子が揃ってたなあと思う。 
    俺自身働きながら学校に通う二十歳過ぎの高校生なんてものをやっていたわけだが。 

    高一の春だった。 
    新入生の初々しさとは全くもって無縁な俺は、参っていた。 
    俺は自分が憑かれていたり、近くに居ると解る性質の人間で、そう言った人間の大半がそうであるように 
    そういうものに対する自衛手段を持っていた。 
    しかしその時は状況が少々特殊で、俺は心底から参っていた。 

    左耳はかりかりという音を聞き続け、頭の中では説明しがたい音響が鳴りっぱなしだ。 
    体は常に鳥肌が立ち掛け、視界は不意に靄がかかったり何かが過ったりする。 
    こういった症状は近くに居るか、もしくは自分が憑かれている時に出る。 
    実際に憑かれてるという実感が有った俺は、当然のように原因を探し、身構える。 
    どこだ。いつ来る。どこから来る。初めは雑多なもの寄せ集めだったはずなのに。 
    起きている間は常にびくびくと周りを警戒し、また、眠りに落ちてからも悪夢を見る。 
    見つけさえすれば何とかできるのに。俺の精神状態はどん底だった。

     
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    33 : 稲男 ◆W8nV3n4fZ. [sage] 投稿日:2010/10/14(木) 18:08:14 ID:awVTwrbQ0 [1/6回(PC)]

    二年に上がった年の、梅雨のことだった。 
    俺の地元では、梅雨とは言うものの雨はほとんど降らない。 
    期間中に三日降ればいい方だ。 
    しかし空気は相応に湿っていて、特有の息苦しさを感じるのだった。 
    そんなある日。 
    じめじめと鬱陶しい空気の中、じめじめとした表情をしながら自転車をこぐ。 
    雨は好きじゃない。 
    雨が降りそうな日も好きじゃない。 
    必然的に梅雨時期は俺の気分も曇る場合が多い。 
    学校が終わり、家に帰る道のりで、ビルの前を通る。 
    都会にあるような高層ビルと比べれば、ビルを名乗るのもおこがましいような慎ましい建物だが、一応、5階まであるビルである。 
    そこを通った時、不意に上から声が聞こえた・・・・・・気がした。 
    ブレーキをかけて上を仰ぐ。 
    口を大きく開いて、「あ」という声が聞こえてきそうな表情をした女性が、 
    ビルの上から、降ってきた。



     
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